採用や人事評価の現場でも、AIを業務の一部に取り入れる企業が増えてきました。書類選考の一次スクリーニングや面接日程の自動調整など、これまで担当者が手作業で進めていた業務の一部を、AIが補助する場面が広がりつつあります。一方で、選考の公平性やバイアスへの配慮も欠かせません。本記事では、採用・人事業務におけるAI活用の現状と、2026年に注目したい3つの動向、導入時に押さえておきたい注意点を解説します。

この記事でわかること
  • 採用業務でのAI活用(書類選考の一次スクリーニング・面接日程調整)
  • 人事評価・労務管理でのAI活用動向
  • 2026年に注目したい3つの動向
  • 導入時に押さえておきたい公平性・バイアスの論点

採用業務でのAI活用(書類選考の一次スクリーニング・面接日程調整)

採用業務のうち、AI活用が特に進んでいるのが書類選考の一次スクリーニングです。応募者数の多い企業では、エントリーシートや職務経歴書を人力ですべて読み込むだけでも大きな工数がかかります。AIに応募書類を読み込ませ、募集要件との合致度合いを整理させることで、担当者は一次通過者との面談準備により多くの時間を割けるようになります。当社では、こうした一次スクリーニングをあくまで「絞り込みの補助」として位置づけ、最終的な合否判断は必ず人が行う運用をおすすめしています。また、面接日程の調整も、候補者と面接官双方の空き時間をAIが自動で突き合わせる仕組みを使えば、メールのやり取りにかかる時間を大きく減らせます。求人票の作成についても、過去の募集内容や職務内容をAIに渡して初稿を作らせ、担当者が表現や強調ポイントを調整する分担にすると、作成の手が止まりにくくなります。当社では、こうした一次対応をAIに任せる場合でも、最終的に候補者へ通知する内容は必ず人が確認してから送る運用にしています。

業務 AIが担う範囲 人が最終的に確認・判断する範囲
書類選考の一次スクリーニング 募集要件との合致度合いを整理し、一次通過候補を絞り込む 一次通過者との面談準備、最終的な合否判断
面接日程調整 候補者・面接官双方の空き時間を自動で突き合わせる 確定した日程の最終確認
求人票の作成 過去の募集内容・職務内容をもとに初稿を作成する 表現や強調ポイントの調整、候補者へ通知する内容の最終確認

書類選考の流れ(応募書類の受領→AIによる一次スクリーニング→一次通過者との面談準備・最終合否判断は人が実施→候補者への通知は人が確認して送信)と、面接日程調整の流れ(候補者・面接官双方の空き時間→AIが自動で空き時間を突き合わせ→日程確定)を示すフロー図

採用活動にAIを使うとどんなメリットがある?

採用活動にAIを取り入れる最大のメリットは、担当者の工数を減らせることにあります。書類選考や日程調整といった定型業務をAIに任せることで、担当者は候補者との面談や見極めといった、人にしかできない判断業務に集中しやすくなります。中小企業庁の「2025年版中小企業白書 第2部第1章第4節『人材戦略』」では、小規模事業者ほど採用の担当者を経営者自身が兼務する傾向が高いと指摘されています。特に中小企業では採用担当を専任で置けないケースも多く、AIによる工数削減が、採用活動そのものの継続可能性を左右する要因になりつつあります。また、選考のスピードが上がることで、候補者を他社に先に押さえられてしまう機会損失を減らせます。加えて、AIが応募書類を一定の基準で機械的に整理することで、担当者ごとの評価のばらつきに気づきやすくなるという副次的な効果も期待できます。人によって重視するポイントが異なるのは自然なことですが、その違いを可視化できるだけでも、選考基準を見直すきっかけになります。

人事評価・労務管理でのAI活用動向

人事評価の分野でも、AI活用の動きが少しずつ広がっています。評価者が記入したコメントを整理し、評価基準に沿った表現に整えたり、複数の評価者間で表現のばらつきを揃えたりする用途での活用が代表的です。当社では、評価コメントの下書きをAIに作らせる場合でも、最終的な評価点や表現の妥当性は評価者自身が確認する工程を必ず残すようにしています。労務管理の領域では、勤怠データや残業時間の異常値をAIが検知する使い方も、実務の現場では徐々に広がりつつあると見られます。人事評価にAIを使う際は、評価そのものを自動化するのではなく、評価者の負担を減らす補助として位置づける姿勢が、現場に受け入れられやすい印象があります。労務管理では、就業規則に関する社員からの質問にAIチャットが一次回答する使い方も増えてきました。問い合わせ対応が減ることで、労務担当が相談対応や制度設計に注力しやすくなります。

人事評価と労務管理それぞれにおけるAI活用内容を並列に示す構造図。人事評価側は評価コメントの整理・複数評価者間の表現統一をAIが行い評価者が最終確認、労務管理側は勤怠・残業時間の異常値検知アラートと就業規則に関する質問への一次回答をAIが行い労務担当が相談対応・制度設計に注力する。両領域に共通する「AIは補助、最終判断・対応は人」という構造を示す

2026年に注目したい3つの動向

採用・人事領域のAI活用について、2026年に注目しておきたい動向を3つ紹介します。

動向 概要 期待される効果
面接内容の要約・記録の自動化 面接の音声を文字起こしし、AIが要点を要約して記録に残す 面接官の主観に頼らず、発言内容を客観的に振り返れる
候補者体験(候補者向けチャット対応)の向上 選考状況の問い合わせや説明会の案内にAIチャットが一次対応する 候補者を待たせずに回答でき、応募者の離脱防止につながる
評価基準そのものの言語化・標準化 評価コメントを整理する過程で、曖昧だった評価基準を言語化し直す 評価者間の基準のばらつきが減り、評価への納得感が高まる

1. 面接内容の要約・記録の自動化

JAPAN AI株式会社が提供する「面接議事録・評価|AI採用プラットフォーム『JAPAN AI HR』」では、対面・オンラインいずれの面接でも、録音データから文字起こしと評価ドラフトの生成までを行える機能が提供されています。面接の音声を文字起こしし、AIが要点を要約して記録に残すこうした機能を持つツールも登場しており、面接官の主観的なメモに頼らず、発言内容を客観的に振り返れる点が評価されています。

2. 候補者体験(候補者向けチャット対応)の向上

調査会社Gartner, Inc.が2025年10月に公表したプレスリリース「Gartner Says AI Revolution and Cost Pressures Are Two Forces Driving the Top Four Trends for Talent Acquisition in 2026」では、生成AIや面接インテリジェンスツール、リクルーターAIエージェントなどが2026年の採用トレンドを形作るとされています。選考状況の問い合わせや説明会の案内など、候補者からのよくある質問にAIチャットが一次対応する事例も増えています。候補者を待たせずに回答できることが、応募者の離脱防止につながります。こうしたAIエージェント自体の技術動向やビジネス活用の広がりについては「AIエージェントの最新動向とは|中小企業におけるビジネス活用の可能性」で詳しく解説しています。

3. 評価基準そのものの言語化・標準化

AIに評価コメントを整理させる過程で、これまで曖昧だった評価基準を言語化し直す企業が出てきています。AI活用をきっかけに評価基準の言語化が進むという副次的な効果は、人事評価のAI活用ならではの動きとして注目されます

導入時に押さえておきたい公平性・バイアスの論点

採用・人事へのAI活用を進めるうえで、必ず押さえておきたいのが公平性とバイアスの問題です。米国雇用機会均等委員会(U.S. Equal Employment Opportunity Commission, EEOC)が2023年5月に公表したガイダンス「Select Issues: Assessing Adverse Impact in Software, Algorithms, and Artificial Intelligence Used in Employment Selection Procedures Under Title VII of the Civil Rights Act of 1964」によれば、AIによる採用選考ツールは既存データの偏りを引き継ぐ可能性があり、雇用主による検証が必要だとされています。当社では、AIによる一次スクリーニングの結果を鵜呑みにせず、除外された応募者の一部を人の目で再確認する工程を挟むなど、バイアスの影響を最小限に抑える工夫を心がけています。AIの判断根拠が説明しにくいという特性も踏まえ、透明性の確保と応募者への開示は、今後も継続的な検討が必要な論点です。公平性への配慮は一度ルールを作って終わりではなく、採用データの傾向が変わるたびに見直しが必要になる、継続的な取り組みだという点は意外と見落とされがちです

論点 具体的なリスク 実務での対応策
過去の採用データに含まれる偏りの継承 特定の属性が不利に扱われてきた傾向を、AIが「望ましいパターン」として学習してしまう 除外された応募者の一部を人の目で再確認する
AIの判断根拠が説明しにくいこと(透明性) 選考プロセスがブラックボックス化し、応募者への説明責任を果たしにくくなる 選考プロセス全体の透明性をどう確保するかを継続的に検討する
応募者への開示の要否 AI利用を伝えないまま選考を進めると、後に不信感を招く可能性がある AIを選考の一部で利用している旨と、最終判断は人が行う旨を開示する
採用データ傾向の変化に応じた継続的な見直し 一度作った運用ルールが、データ傾向の変化により陳腐化する 採用データの傾向が変わるたびにルール・運用を見直す

過去の採用データ(偏りを含む可能性)→AIモデルの学習→一次スクリーニング結果に偏りが反映されるリスクという問題発生の流れと、除外された応募者の一部を人が再確認→選考プロセスの透明性確保・応募者への開示→採用データ傾向の変化に応じた継続的な見直しという対応ループを示すフロー図

AI活用に伴う情報セキュリティやガバナンス全般の考え方については「AIセキュリティとガバナンスとは|中小企業が押さえたい5つの対策」でも整理していますので、あわせてご確認ください。

導入を進める際に合わせて確認したいこと

採用・人事の一部業務にAIを取り入れる場合も、全社的なAI導入計画の中に位置づけたほうが、無理なく運用に定着しやすくなります。段階的な導入の進め方は「中小企業のAI導入ロードマップ|3年計画で進める5つのステップとは」で解説していますので、あわせてご参照ください。他部門でのAI活用の具体例を確認しながら、人事・採用業務にどこまで応用できそうかを見極めたい場合は「AI業務効率化の実例集|部門別20の事例に見る具体的な活用の方法」も参考になります。当社では、まずは工数の大きい定型業務から着手し、効果を確認したうえで対象業務を広げていく進め方をおすすめしています。

人事機能を組織全体の体制の中でどう位置づけるか

採用や人事評価へのAI活用が進むほど、人事機能を組織全体の体制設計の中でどう位置づけるかという視点も重要になってきます。部門は異なりますが、体制設計の考え方そのものは共通する部分が多く「マーケティング組織の作り方|中小企業のための体制設計7つのポイント」で紹介している役割分担や意思決定の整理方法も、人事部門の体制を見直す際の参考になります。

まとめ

採用・人事業務のAI活用は、書類選考の一次スクリーニングや面接日程調整といった定型業務から着実に広がっており、2026年は面接記録の自動化や候補者体験の向上、評価基準の言語化といった動きがさらに進むと見られます。一方で、AIによる選考には公平性・バイアスの論点が常につきまとうため、AIの判断を鵜呑みにせず、人の確認を残す運用を欠かさないことが重要です。自社の採用・人事業務にどこまでAIを取り入れられるか具体的に相談したい場合は、当社へのご相談もご検討ください。

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よくある質問

Q 採用活動にAIを導入するとどんな効果がありますか?

A

書類選考や面接日程調整といった定型業務の工数を減らせるため、担当者が候補者との面談や見極めなど人にしかできない判断業務に集中しやすくなります。選考スピードの向上にもつながります。

Q AIによる書類選考にバイアスのリスクはありますか?

A

過去の採用データに含まれる偏りをAIがそのまま学習してしまう可能性があるため、リスクはゼロではありません。AIの判断を鵜呑みにせず、除外された応募者を人の目で再確認する工程を残すことをおすすめします。

Q 人事評価にAIを使うのは適切ですか?

A

評価そのものを自動化するのではなく、評価コメントの整理や表現のばらつきを揃える補助として使う位置づけであれば、現場にも受け入れられやすい使い方といえます。

Q 中小企業の人事部門でも導入は現実的ですか?

A

専任の採用担当を置けない中小企業ほど、日程調整や一次スクリーニングといった定型業務をAIに任せる効果が大きく、現実的な選択肢になります。

Q 自社に合う人事AI活用の相談先は?

A

どの業務からAIを取り入れるとよいか判断に迷う場合は、当社へのご相談もご検討ください。