広報のAI活用が広がり、プレスリリースの作成やメディア対応の準備に生成AIを取り入れる企業が増えています。一方で、「AIで作った文章をそのまま配信してよいのか分からない」「少人数の広報でどこからAIに任せればよいのか決められない」「配信後の効果をどう測ればよいか整理できていない」といった点が課題になっています。本記事では、広報業務でAIを使える範囲、プレスリリース作成と効果測定を効率化する5つの方法、配信前に人が確認したい項目を解説します。

この記事でわかること
  • 広報業務でAIに任せる作業と人が判断する作業
  • プレスリリース作成と効果測定を効率化する5つの方法
  • AIでプレスリリースを作成するときのコツ
  • 配信前に人が確認する項目
  • ひとり広報でも回せる運用フローと効果測定の考え方

広報のAI活用とは何か

広報のAI活用とは、プレスリリースの作成やメディア対応の準備、効果の整理といった広報業務の一部に生成AIを使い、作業時間を減らして判断に充てる時間を増やす取り組みです。結論として、AIには「材料を整える作業」を任せ、社外に出す内容の最終判断は人が持つ役割分担が基本になります。

当社では、自社サイトでコンテンツ記事を100本以上公開・運用しており、AIを使って文章を作る場合も事実確認と最終判断は人が行う運用を基本にしています。広報でも考え方は同じで、AIが得意な下書きや整理はAIに、数値・固有名詞・引用・公開判断は人に置くと決めておくことが、安全に効率化する近道です。

作業の種類 AIに任せやすい作業 人が判断する作業
プレスリリース 構成案の作成、初稿のたたき台、タイトル案の出し分け 数値・日付・固有名詞の確定、公開可否、表現のトーン
メディア対応 想定問答の草案、取材依頼文の下書き、媒体の情報整理 取材の可否、コメントの内容、報道機関との関係構築
効果測定 掲載情報の集約、レポートの下書き、傾向の整理 成果の解釈、次の施策の優先順位、経営への報告

プレスリリース作成の役割分担図。AIに任せる作業は構成案と初稿・タイトル案の出し分け・表記ゆれの洗い出し・想定問答の草案の4つ、人が判断する作業は数値と固有名詞・引用と他社情報・個人情報と機密・公開可否とトーンの4つであることを左右に対比して示している

この役割分担は、総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」がAI利用者に求めている考え方とも重なります。同ガイドラインでは、AIの出力の妥当性を利用者が確認することや、重要な判断で人が関与することなどが示されています。生成AIの使い方全般は、生成AIによるコンテンツ制作の実践ガイド|プロンプト設計の3つのコツでも整理しています。

広報の業務を効率化する5つのAI活用方法

広報のAI活用は、企画から効果測定までの業務フローに沿って考えると整理しやすくなります。ここでは、プレスリリース作成から効果測定までを5つの方法に分けて紹介します。

プレスリリースの構成案と初稿を作る

最初の方法は、材料をAIに渡して構成案と初稿のたたき台を作らせることです。新商品や提携、イベントといった発表内容のメモを渡し、「タイトル、リード、詳細、会社概要」の型に並べてもらうと、白紙から書き始める時間を大きく減らせます。ここで作るのはあくまで下書きで、数値や日付は次の工程で人が確定します。

配信前の事実確認と表記ゆれをチェックする

2つ目は、配信前のチェックにAIを使う方法です。社名・商品名の表記ゆれ、敬称の不統一、日付と曜日の食い違いなどは、AIに一覧で洗い出させると見落としが減ります。ただし、AIは事実の正誤そのものを保証しないため、指摘された箇所と元資料を人が突き合わせる工程は省けません。

メディアリストと取材対応の準備を整える

3つ目は、メディア対応の準備です。掲載を狙う媒体の過去記事を人が読んで整理した上で、取材依頼文の草案や想定問答の下書きをAIに作らせると、準備の時間を短縮できます。取材で答える内容は事業の実態に沿って人が確定させ、AIの想定問答をそのまま使わないことが前提になります。取材時のメモや録音の整理には、議事録AI活用の手順とは|文字起こしから要約・共有までの運用設計の考え方が応用できます。

掲載情報の収集とレポートを下書きする

4つ目は、掲載された記事やSNSでの反応の一覧化です。人が集めたURLや記事タイトル、掲載日を表に貼り付けて、月次の広報レポートの下書きをAIにまとめさせると、報告資料づくりの負担が軽くなります。数値を含む部分は集計元のデータと照合し、人が確認してから報告します。

効果測定の観点と改善点を整理する

5つ目は、効果測定の観点整理です。掲載数、Webサイトへの流入、指名検索の変化、問い合わせへの影響といった観点を並べ、施策ごとにどの指標で見るかをAIと壁打ちして決めると、測定設計が早く固まります。営業部門との連携が必要な場合は、営業部門のAI活用ガイド|商談準備から契約管理まで効率化する方法も参考になります。

広報業務を企画・作成・配信・メディア対応・効果測定の5工程に分け、各工程でAIが担う作業と人が判断する作業を対応づけた業務マップ。工程ごとに小見出しと具体的な作業を並べている

プレスリリースをAIで作成するときのコツは?

プレスリリースをAIで作成するコツは、材料を先に渡し、型と文字数を指定して、数値は人が入れることです。AIに「良いプレスリリースを書いて」とだけ頼むと、もっともらしいが中身の薄い文章になりやすいため、入力する材料の質が出力の質を決めます。

当社の支援経験では、広報を担う担当者が少人数で、他業務と兼務しているケースが多く見られます。限られた時間で使うため、指示文をテンプレート化しておく運用が現実的です。プロンプト設計の基本はプロンプトエンジニアリング基礎|ビジネス活用で押さえたい実践コツで解説しています。

コツ 具体的なやり方 理由
材料を先に渡す 発表の背景、対象、日付、数値、問い合わせ先を箇条書きのメモで渡す AIが事実を推測で補うことを減らせる
型を指定する 「タイトル、リード、詳細、会社概要」の順など、構成と文字数を指定する 媒体に合わせた形に整い、修正が少なくなる
数値は空欄にする 金額・件数・日付は「【要確認】」で空欄にしてもらい、人が記入する 誤った数値が紛れ込む事故を防げる
複数案を出させる タイトルとリード文を3案ずつ出させ、人が選んで組み合わせる 表現の選択肢が増え、判断に集中できる

実務では、AIの初稿を「そのまま使う原稿」ではなく「編集する素材」として扱うと決めておくことで、品質と作業時間のバランスが取りやすくなります。

AIで作ったプレスリリースは配信しても問題ないか

AIで作ったプレスリリースは、人が確認を終えた内容であれば配信できます。問題になるのは、確認を省いたまま出すことです。確認したい観点は、事実の誤り、個人情報や機密の混入、著作権の3つです。

まず、事実の誤りです。生成AIには、ハルシネーション(AIが事実と異なる内容をもっともらしく回答すること)が起こり得るため、数値、日付、役職、固有名詞は元資料と1つずつ照合します。次に、個人情報や機密の扱いです。個人情報保護委員会は、「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)で、個人情報取扱事業者が個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、利用目的の範囲内かを確認することなどを注意喚起しています。取材先や顧客の情報をAIに入力する前に、社内のルールを確認します。

最後に、著作権です。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」では、生成物が既存の著作物と似ており、それに依拠している場合には著作権侵害となり得るという整理が示されています。他社の記事や画像を参考にした表現は、そのまま使わず人が確認します。画像を使う場合は、画像生成AIのビジネス活用術とは|著作権リスクと安全な使い方を解説もあわせてご確認ください。

確認項目 確認の内容 担当
数値・日付・固有名詞 元資料(社内稟議書、契約書、公式資料)と1つずつ照合する 広報担当
引用・他社情報 出典を確認し、他社の表現をそのまま使っていないか見る 広報担当
個人情報・機密 入力した情報が社内ルールの範囲内か、記載してよい内容か確認する 広報担当と責任者
公開判断 発表内容、時期、トーンが会社の意思として適切か判断する 責任者

当社のニュース発信でも、AIを使う場合は同じ考え方で、事実確認と最終判断を人が行います。社内の機密や個人情報の扱いを整理する際は、AIセキュリティとガバナンスとは|中小企業が押さえたい5つの対策が参考になります。

ひとり広報のAI活用フロー

ひとり広報や少人数の広報では、AIを使う工程を週単位のフローに固定するのが現実的です。担当者が1〜2名の体制では、毎回やり方を考える時間がそのまま負担になるためです。

クライアント支援の現場では、広報の担当者が営業や総務との兼務であるケースが多く見られます。そうした体制では、次のようなフローを型として決めておくと、無理なく回せます。

順番 工程 AIの使いどころ 人が行うこと
1 材料整理 メモから項目を整理する 事実と数値を用意する
2 初稿作成 型に沿って初稿を作る 意図に合わせて編集する
3 配信前確認 表記ゆれと不備を洗い出す 元資料と照合し、承認を得る
4 配信・対応 問い合わせ対応の草案を作る 返答内容を確定させる
5 振り返り 掲載情報をレポート化する 成果を解釈して次を決める

ひとり広報では、AIの利用を増やすよりも、確認の工程を必ず残す運用にしておくほうが、長く続けられます。

広報の効果測定とサイテーション・被リンクの関係

広報の効果測定は、掲載数だけでなく、掲載がWebサイトへの流入や指名検索、AI検索での言及にどうつながったかまで見ることが現実的です。プレスリリースは、外部メディアに自社の名前が載る機会になるため、サイテーション(他サイトで自社名やサービス名が言及されること)の獲得にも関わります。

サイテーションの考え方は、サイテーション獲得の実践ガイド|AI検索時代に引用される戦略とはで解説しています。AI検索での言及状況の見方はAI引用率の計測方法とKPI設計|担当者のための5つの視点【2026年版】にまとめています。当社は、AI検索での自社ブランドの引用・言及を計測するSaaSであるAIMentionを開発・運営しており、計測の観点は広報の効果測定と相性がよいと考えています。

一方で、被リンク目的の配信には注意が必要です。Googleの「Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー」(2026年9月2日)では、他のサイトで配布されるプレスリリース内の作為的なアンカーテキストリンクが、ランキングに影響するリンクスパムの例として挙げられています。プレスリリースは被リンクを稼ぐ手段ではなく、報道や認知につなげる手段として設計し、評価は言及と流入の両面で見ることをおすすめします。被リンクの考え方全般は、BtoB企業の被リンク獲得戦略とは|今すぐ実践できる7つの方法を解説を参照してください。AI検索での言及を増やす取り組みについては、AEO/LLMO対策もご確認ください。

まとめ

広報のAI活用は、プレスリリースの初稿作成、配信前のチェック、メディア対応の準備、掲載情報のレポート化、効果測定の観点整理という5つの方法で効率化できます。どの方法でも、数値・引用・個人情報・公開判断は人が確認するという線引きを決めておくことが前提です。

まずは、プレスリリースの初稿づくりと配信前の表記チェックの2つから始め、効果測定へ広げていくことをおすすめします。白紙から書く時間と見落としを減らせる点は、少人数の広報ほど実感しやすい部分です。

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よくある質問

Q 広報担当がAIでできる業務は何ですか?

A

プレスリリースの構成案と初稿、表記ゆれの確認、取材依頼文や想定問答の下書き、掲載情報のレポート化などです。数値・引用・公開判断は人が行う前提で使うと、安全に作業時間を減らせます。少人数の広報ほど、材料を整える作業から任せる方法が取り入れやすい傾向です。

Q プレスリリースをAIで作成するときのコツは何ですか?

A

背景・日付・数値などの材料を先に渡し、構成と文字数を指定することです。数値は空欄にして人が記入すると、誤りを減らせます。指示文の作り方はプロンプトエンジニアリング基礎|ビジネス活用で押さえたい実践コツで解説しています。

Q AIで作ったプレスリリースは配信して問題ありませんか?

A

人が事実・引用・個人情報・機密を確認した内容であれば配信できます。ハルシネーションが起こり得るため、数値や固有名詞は元資料と1つずつ照合し、最終的な公開判断は責任者が行います。個人情報を含む内容をAIに入力する場合は、社内ルールの範囲かも事前に確認してください。

Q 広報のAI活用で効率化しやすい工程はどこですか?

A

初稿づくり、配信前の表記チェック、月次レポートの下書きなど、材料を整える工程が効率化しやすい傾向です。社外に出す内容の最終判断は人が持つ運用をおすすめします。まずは初稿づくりと表記チェックの2つから始め、慣れてから効果測定へ広げると無理がありません。

Q 広報のAI活用や効果測定の進め方を相談できますか?

A

広報でのAI活用ルールの整理や、AI検索での言及を含む効果測定の設計は、当社の支援範囲でご相談いただけます。どの業務からAIに任せるか、どこまで人が確認するかの線引きに迷う場合は、当社へのご相談もご検討ください。