マーケティングが時間をかけて獲得したリードが、営業からは「質が低い」と評価されてしまう。逆に営業からは「マーケティングが何をしているか見えない」と言われてしまう。こうしたすれ違いは、規模を問わず多くの企業で見られる典型的な課題です。放置すると、両部門が互いの成果を正しく評価できず、社内の協力関係そのものが悪化しかねません。本記事では、マーケティングと営業の連携(アラインメント)が崩れる理由と、MQL/SQLの定義のすり合わせ方、SLA設計など、具体的な実践手法を解説します。

この記事でわかること
  • アラインメントとは何か
  • なぜ連携が崩れやすいのか
  • MQL SQLの定義をすり合わせる
  • SLAの設計方法

マーケティングと営業の連携(アラインメント)とは何か

BtoBの商談サイクル全体の設計については「BtoB企業のマーケティング戦略|長い商談サイクルへの対応法とは」もあわせてご覧ください。

アラインメントとは、マーケティング部門と営業部門が、リードの定義・評価基準・引き渡しのタイミングについて共通認識を持ち、一貫した動きができている状態を指します。単に仲が良い、コミュニケーションが取れているという曖昧な状態ではなく、誰が見ても同じ基準でリードの状態を判断できる仕組みが整っていることがアラインメントの本質です。

この仕組みが整っていない企業では、マーケティングは獲得数を、営業は受注数だけを見ており、その間にある「リードがどう育ち、どう引き渡されたか」というプロセスが誰の責任範囲でもなくなってしまいがちです。責任の所在が曖昧なプロセスは、問題が起きても誰も気づかないまま放置されやすく、機会損失が静かに積み重なっていきます。1年間を通じて振り返ってみると、この積み重ねが受注機会の思いのほか大きな取りこぼしになっていたと気づく企業も少なくありません。

なぜ連携が崩れやすいのか

連携が崩れる最大の要因は、マーケティングと営業で評価指標(KPI)が異なることです。マーケティングはリード獲得数やコンテンツの閲覧数で評価され、営業は商談化数や受注額で評価される。この評価軸のズレが、双方の優先順位の食い違いを生みます。

当社の支援先でも、マーケティングが月間のリード獲得数を追い求めるあまり、資料請求のハードルを下げすぎてしまい、結果的に営業が対応しきれないほど「検討度の低いリード」が大量に流れ込んでしまったケースがあります。獲得数という指標だけを追うと、こうしたミスマッチが起きやすくなります。

もう一つの要因は、両部門が使う「言葉」の定義が揃っていないことです。マーケティングが「見込み顧客」と呼ぶ対象と、営業が「見込み顧客」と呼ぶ対象が実は違う基準で選ばれている、という状況は珍しくありません。言葉の定義が揃っていないと、会議で同じ単語を使っていても、実際には違う対象について話しているというすれ違いが起こります。こうした食い違いは表面化しにくく、双方が「話が通じていない」と感じながらも、原因が言葉の定義のズレにあることに気づけないまま時間だけが過ぎてしまうことも少なくありません。

MQL/SQLの定義をすり合わせる

アラインメントの土台となるのが、MQL(Marketing Qualified Lead、マーケティングが有望と判断したリード)とSQL(Sales Qualified Lead、営業が商談化の対象と判断したリード)の定義を、両部門ですり合わせることです。

この定義がないまま「有望そうなリード」を感覚的に営業へ渡してしまうと、営業側の基準と一致するかどうかは運任せになります。役職・企業規模・行動履歴(資料ダウンロード回数や閲覧ページ)など、具体的な条件でMQLの基準を言語化することが、最初の一歩になります。定義を作る際は、過去に受注につながったリードの特徴を振り返り、共通するパターンを洗い出す作業から始めると、机上の空論になりにくくなります。

マーケティングと営業のアラインメントを構成する4要素を示す図解: MQL/SQL定義(リードの評価基準をすり合わせる)、SLA設計(役割と数値目標を明文化する)、定例コミュニケーション(改善のための場を設ける)、ツール・データ共有(同じ画面で状況を確認する)を並べて整理している

SLA(サービスレベル合意)を設計する

MQL/SQLの定義が定まったら、次はマーケティングと営業の間でSLA(サービスレベル合意)を結びます。SLAとは、マーケティングが「月に何件のMQLを供給するか」、営業が「MQLを受け取ってから何時間以内にファーストコンタクトを行うか」といった、双方の役割と数値目標を明文化した合意です。

これまでのご支援で見えてきたのは、SLAを一度決めて終わりにするのではなく、四半期に一度など定期的に数値を見直している企業ほど、連携の状態が安定しやすいという傾向です。市場環境やリードの供給量は変動するため、固定的なSLAでは実態と合わなくなることがあります。

SLAを設計する際は、数値目標だけでなく、目標未達時にどう対応するかも合わせて決めておくと運用がスムーズになります。たとえばマーケティングがMQLの供給数を下回った場合、営業側にどう共有し、次の打ち手をどう検討するかまで決めておくことで、未達が起きた際の責任の押し付け合いを防ぎやすくなります。

定例のコミュニケーション設計

制度としてのMQL/SQL定義やSLAを整えるだけでなく、日常的なコミュニケーションの場を設計することも欠かせません。週次や隔週での定例ミーティングで、供給されたリードの実際の反応や、商談化しなかった理由を共有する場を持つことで、定義と現場感覚のズレを早期に修正できます。

クライアント支援の現場では、この定例ミーティングを「報告会」ではなく「改善のための場」と位置づけている企業ほど、マーケティングと営業の関係が良好に保たれている印象があります。数字の報告だけで終わらせず、次にどう改善するかを一緒に議論する時間を確保することが重要です。

ツール・データ基盤の共有

マーケティングと営業が別々のツールでリード情報を管理していると、リードの状態や接触履歴が分断され、連携の土台そのものが崩れてしまいます。CRMやMAツールを通じて、リードの行動履歴・商談状況を双方が同じ画面で確認できる状態を整えることが、アラインメントを維持する実務上の基盤になります。

ツール導入そのものが目的化してしまうと本末転倒になるため、まずはMQL/SQLの定義とSLAという運用ルールを固めたうえで、それを支えるツールを検討する順序が現実的です。すでにツールを導入している場合でも、運用ルールが曖昧なまま使っているケースは多く、ツールの機能を見直す前に、まず定義とルールの棚卸しから始めることをおすすめします。

組織体制における選択肢

アラインメントを推進する体制としては、マーケティングと営業の橋渡し役を専任で置く方法と、既存のマーケティング担当者や営業マネージャーが兼務する方法があります。専任担当を置ける規模の企業では、リードの受け渡し状況を客観的に管理できる利点がありますが、中小企業では兼務でスタートし、運用が定着してきた段階で体制を見直す進め方でも十分機能します。

どちらの体制であっても重要なのは、マーケティングと営業のどちらか一方の部門に完全に属さない、中立的な視点で数値と現場の声を見られる立場を確保することです。この視点が欠けると、都合の良いデータの解釈に偏ってしまい、本来見直したい課題が見過ごされてしまうことがあります。

アラインメントで陥りやすい失敗

よくある失敗は、SLAやMQL/SQLの定義を一度決めただけで満足してしまい、その後の運用状況を振り返らないことです。定義や合意は、実際に運用してみて初めて過不足が見えてくるものであり、決めた瞬間がゴールではありません。

もう一つの失敗は、マーケティングと営業のどちらか一方だけが仕組みづくりに熱心で、もう一方が「押し付けられた」と感じてしまうことです。アラインメントは一方的なルール策定ではなく、双方が納得したうえで作り上げるプロセスであることを、取り組みの初期段階から意識しておく必要があります。片方の部門だけで定義やSLAの原案を作り、後から共有するだけの進め方では、現場の納得感を得にくくなります。

アラインメントの効果をどう測るか

アラインメントの取り組みが機能しているかどうかは、SLAで定めた数値(MQL供給数・ファーストコンタクトまでの時間など)の達成率だけでなく、MQLからSQL、SQLから受注までの各段階の転換率を継続的に追うことで確認できます。転換率が特定の段階で継続的に低い場合、その段階の定義や引き渡し方法に見直しの余地がある可能性があります。

数値だけでなく、営業担当者へのヒアリングを定期的に行い、「渡されたリードの質をどう感じているか」を定性的に確認することも有効です。数値上は基準を満たしていても、現場の実感とズレている場合、定義そのものを見直すきっかけになります。定量的な指標と定性的な声の両方を組み合わせて確認する習慣を持つことで、制度が形骸化するのを防ぎやすくなります。

まとめ

マーケティングと営業の連携を高めるには、MQL/SQLの定義のすり合わせ、SLAによる役割と数値目標の明文化、定例のコミュニケーションの場、そしてそれらを支えるツール・データ基盤の共有が土台になります。制度を一度整えて終わりにせず、定期的に見直しながら運用していくことが、長期的に機能するアラインメントにつながります。特に立ち上げの初期段階では、完璧な制度を目指すよりも、両部門が同じ言葉で会話できる状態をつくることを優先すると、無理なく定着させやすくなります。制度・数値・コミュニケーションのいずれか一つだけに偏らず、3つを並行して整えていく視点を持つことが、アラインメントを一過性の取り組みで終わらせないための鍵になります。自社の連携体制を専門家と一緒に整理したい場合は、「デジタルマーケティング支援」のサービスページもあわせてご覧ください。

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よくある質問

Q MQLとSQLの違いは何ですか?

A

MQLはマーケティングが有望と判断したリード、SQLは営業が商談化の対象と判断したリードを指します。この2つの基準を両部門ですり合わせることが、アラインメントの出発点になります。

Q SLAは、どのくらいの頻度で見直すのが目安ですか?

A

市場環境やリードの供給量は変動するため、四半期に一度程度は数値目標が実態と合っているかを振り返ることをおすすめします。固定したまま長期間見直さないと、現場の実態と乖離しやすくなります。

Q マーケティングと営業の人数が少ない中小企業でも、アラインメントは必要ですか?

A

必要です。人数が少ないほど、認識のズレによる非効率の影響が相対的に大きくなります。大がかりな制度でなくても、リードの定義を簡単な言葉ですり合わせるだけでも効果があります。

Q アラインメントの取り組みは、誰が主導するのがよいですか?

A

マーケティング・営業どちらか一方が主導するのではなく、双方が納得したうえで進めることが望ましいです。経営者や部門を横断できる立場の人が間に入り、初期の合意形成を後押しする形も有効です。

Q ツール導入から着手した方が早いのではないですか?

A

ツールはあくまで運用ルールを支える手段です。MQL/SQLの定義やSLAといった運用ルールが固まっていない状態でツールを導入しても、データが有効に活用されないことがあります。進め方に迷う場合は、当社へのご相談もご検討ください。