STP分析とは、市場をセグメンテーション(切り分け)し、狙うべきターゲティング(対象)を定め、自社のポジショニング(立ち位置)を明確にするための、マーケティング戦略の基本フレームワークです。限られたリソースで戦う中小企業ほど、誰に何を届けるかを曖昧にしたままでは、広告費もコンテンツ制作費も分散してしまいます。本記事では、STP分析の基本的な考え方から、中小企業がゼロから実務に落とし込むための3つのステップまでを解説します。

この記事でわかること
  • STP分析(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)の基本的な考え方
  • セグメンテーションの4つの切り口と実践方法
  • ターゲティングの判断基準となる3つの評価軸
  • ポジショニングマップの作り方
  • 中小企業がゼロからSTP分析を実務に落とし込む3つのステップ

STP分析とは何か(マーケティング戦略の土台となる考え方)

STP分析とは、Segmentation(市場細分化)・Targeting(狙う市場の選定)・Positioning(自社の立ち位置の明確化)という3つの工程を順に行い、「誰に、何を、どう届けるか」を定義するマーケティング戦略の基本フレームワークです。3つの頭文字を取ってSTPと呼ばれ、広告・Webサイト・営業トークといった個別の施策を検討する前段階で行う、戦略設計の土台にあたります。

当社の支援経験では、広告の反応が悪い、Webサイトからの問い合わせが増えないといった相談の多くは、施策そのものよりもSTPが曖昧なまま進めていることが原因になっているケースが目立ちます。誰に向けたメッセージなのかが定まっていないと、どれだけクリエイティブを磨いても訴求がぼやけてしまいます。

STP分析は、中小企業のマーケティング戦略立案フレームワーク全体の中でも、特に「誰に売るか」を定義する土台の部分にあたります。事業全体の戦略設計の考え方は、別記事「中小企業のマーケティング戦略立案フレームワーク、経営者が押さえる7つの視点」で解説していますので、STP分析を戦略全体の中でどう位置づけるかを確認する際にあわせてご覧ください。

セグメンテーションの実践方法:市場をどう切り分けるか

セグメンテーションとは、市場全体を、共通のニーズや特性を持つグループに切り分ける作業です。切り分け方の軸には、企業の属性で分ける方法と、顧客の行動や心理で分ける方法があり、扱う商材によってどの軸を重視すべきかが変わります。

セグメンテーションの主な4つの切り口

切り口を1つに絞る必要はなく、複数の軸を組み合わせて市場を捉えることで、より実態に近いセグメントが見えてきます。中小企業の場合、いきなり細かく分けすぎるとどのセグメントも規模が小さくなりすぎるため、まずは大きな軸で分けてから徐々に絞り込む進め方が現実的です。

切り口 内容 中小企業での使い方の例
デモグラフィック 業種・企業規模・役職・年齢等の属性 従業員数◯名以下の製造業、といった条件で絞り込む
ジオグラフィック 地域・商圏 営業対応可能なエリア内かどうかで一次選別する
サイコグラフィック 価値観・課題意識・優先順位 コスト重視か品質重視かで訴求メッセージを変える
行動 購買履歴・利用頻度・検討段階 資料請求済みだが未商談の層を優先アプローチ対象にする

実務で複数のクライアントを支援する中で、属性だけでセグメントを切ると、実際の購買行動とずれてしまうケースが多いことを実感しています。属性情報に加えて、行動データやサイコグラフィックの要素を組み合わせることで、実態に近いセグメントが見えてきます。

ターゲティングの実践方法:狙う市場を選ぶ判断基準

ターゲティングとは、セグメンテーションで洗い出した複数のグループの中から、自社が優先的にアプローチすべき市場を選定する工程です。すべてのセグメントに均等にリソースを配分することはできないため、優先順位を明確にする必要があります。

市場規模・競合状況・自社の強みの3軸で評価する

ターゲティングの判断は、市場規模・競合状況・自社の強みとの適合度という3つの軸で評価すると、経営会議での説明がしやすくなります。市場規模だけを見て大きな市場を狙うと、資本力のある競合との消耗戦になりやすく、逆に小さすぎる市場では事業として成立しません。

ターゲティング判断の3つの評価軸を示す図解: 市場規模(狙う市場が事業として成立する規模かを確認する)、競合状況(資本力のある競合と消耗戦にならないかを確認する)、自社の強みとの適合度(自社の強みが評価される市場かを確認する)の3項目を並列に整理した図

中小企業が狙いやすいのはニッチな市場

経営資源が限られる中小企業にとって、大手企業が本格参入していないニッチな市場や、特定の業種・課題に特化した市場は、競合状況の軸で有利に働きやすい領域です。市場規模の大きさよりも、自社の強みが際立つ市場かどうかを優先して選ぶほうが、中小企業のターゲティングとしては現実的な判断につながります。

ポジショニングの実践方法:独自の立ち位置を定義する

ポジショニングとは、選定したターゲット市場の中で、競合と比較したときに自社がどのような独自の立ち位置を占めるかを定義する工程です。ターゲットの頭の中に「この分野なら、この会社」という認識を作ることが目的になります。

ポジショニングマップで競合との違いを可視化する

ポジショニングを検討する際によく使われるのが、2つの軸を設定し、自社と競合を配置するポジショニングマップです。「価格の高低」と「専門性の高低」のように、ターゲットが意思決定の際に重視する要素を軸に選ぶと、自社の立ち位置と競合との違いが視覚的に整理できます。軸の選び方を誤ると意味のない図になってしまうため、ターゲットが実際に比較検討する際の判断基準を軸に据えることが重要です。

中小企業がSTP分析でつまずきやすい落とし穴

クライアント支援の現場では、STP分析の各工程で共通してつまずきやすいポイントがいくつか見られます。事前に把握しておくことで、遠回りを避けやすくなります。

セグメントを広く取りすぎる

「幅広いお客様に対応できます」という発想でセグメントを広く取ってしまうと、結局誰にも刺さらないメッセージになりがちです。セグメントは、絞り込むことで初めて機能します。

ターゲティングが経営者の勘だけで決まってしまう

市場規模や競合状況のデータを確認せず、経営者の過去の経験や勘だけでターゲットを決めてしまうケースも少なくありません。勘を否定する必要はありませんが、3つの評価軸に沿って一度言語化しておくことで、社内での認識合わせがしやすくなります。

ポジショニングが競合と差別化できていない

「品質が高い」「対応が丁寧」といった、どの会社も主張しがちな要素だけをポジショニングの軸にしてしまうと、ターゲットの記憶に残りません。競合が言っていない切り口を見つけることが、ポジショニングの本質です。

STP分析を実務に落とし込む3つのステップ(実践事例)

ここまでのS・T・Pそれぞれの考え方を踏まえ、実際に中小企業がゼロからSTP分析に取り組む際の進め方を、3つのステップに整理します。

STP分析を実務に落とし込む3つのステップを示す図解: 1.顧客データを棚卸しセグメント仮説を立てる、2.市場規模・競合状況・自社の強みの3軸でターゲットを絞り込む、3.ポジショニングマップを作りメッセージに落とし込む、という3段階の流れ

ステップ1:既存顧客データを棚卸しし、セグメント仮説を立てる

ゼロから市場調査を行う前に、まずは既存の取引先データを棚卸しし、業種・規模・成約に至った経緯などを整理します。売上や利益率が高い既存顧客に共通する特徴を洗い出すことが、セグメント仮説の最も現実的な出発点になります。

ステップ2:3つの評価軸でターゲットを絞り込む

洗い出したセグメント仮説を、市場規模・競合状況・自社の強みとの適合度という3つの評価軸に照らして絞り込みます。この段階で、狙うべきターゲットを1〜2個程度に絞り込めると、その後のメッセージ設計がぶれにくくなります。

ステップ3:ポジショニングマップを作り、メッセージに落とし込む

ターゲットが決まったら、ポジショニングマップで競合との違いを整理し、その内容をWebサイトや広告のメッセージに反映させます。新規市場への参入をSTPの視点から丁寧に設計した支援事例として、「eバイク特化型ポータルサイトの新規立ち上げとSEO対策」もあわせてご覧ください。特化領域を明確にすることで、狙った市場の中での認知形成を進めた事例です。

STP分析で戦略の骨格が固まったら、次は具体的な数値目標に落とし込む段階に進みます。目標設定の考え方は、別記事「マーケティングKPI・KGI設計の実践ガイド|失敗しない中小企業の4ステップ」で詳しく解説しています。また、STPで定めたメッセージを実際の広告運用やコンテンツ制作に反映させる実務支援については、「Webマーケティング」のサービスページで紹介していますので、あわせてご確認ください。

まとめ

STP分析は、セグメンテーションで市場を切り分け、ターゲティングで狙う市場を選び、ポジショニングで独自の立ち位置を定義するという、マーケティング戦略の土台となるフレームワークです。これまでのご支援で見えてきたのは、STPを丁寧に言語化した企業ほど、その後の広告やWebサイトのメッセージがぶれにくくなるということです。まずは既存顧客データの棚卸しから始め、3つの評価軸でターゲットを絞り込み、ポジショニングマップでメッセージに落とし込む、という順番で取り組んでみてください。

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よくある質問

Q STP分析とは何ですか?

A

STP分析とは、市場をセグメンテーション(切り分け)し、狙うターゲティング(対象)を選び、自社のポジショニング(立ち位置)を明確にする、マーケティング戦略の基本フレームワークです。広告や営業施策を検討する前段階で行う戦略設計の土台にあたります。

Q セグメンテーションとターゲティングの違いは何ですか?

A

セグメンテーションは市場全体を共通のニーズを持つグループに切り分ける作業で、ターゲティングはその中から自社が優先的にアプローチすべき市場を選ぶ工程です。セグメンテーションで選択肢を洗い出し、ターゲティングで絞り込むという順序で進めます。

Q 中小企業がSTP分析に取り組む際、何から始めればよいですか?

A

まずは新たに市場調査を行うのではなく、既存の取引先データを棚卸しし、売上や利益率が高い顧客に共通する特徴を洗い出すことから始めるのが現実的です。そこで得た仮説を、市場規模・競合状況・自社の強みの3軸で評価していきます。

Q ポジショニングマップはどのように作ればよいですか?

A

ターゲットが意思決定の際に重視する2つの要素(例:価格の高低と専門性の高低)を軸に設定し、自社と競合を配置します。軸の選び方を誤ると意味のない図になるため、ターゲットの実際の比較基準を軸に据えることが重要です。

Q STP分析を終えた後は、何をすればよいですか?

A

STPで戦略の骨格が固まったら、次は具体的なKPI・KGIへの落とし込みと、Webサイトや広告メッセージへの反映を行います。自社での実務への落とし込みに迷う場合は、当社へのご相談もあわせてご検討ください。