マーケティング業務を内製にするか外注にするかは、多くの中小企業経営者が一度は悩む論点です。「人件費を考えれば内製の方が安い」という単純な比較では、採用・教育コストやマネジメント工数が抜け落ちてしまい、実際の投資対効果を見誤ることがあります。本記事では、内製と外注それぞれの体制コストの正しい考え方から、外注費用相場との比較ポイント、そして事業フェーズに応じた判断基準までを、経営視点で整理して解説します。
- 内製と外注の判断基準(経営視点で見るべき4つの観点)
- 内製にかかる体制コストの按分方法
- 外注にかかる費用相場と比較のポイント
- 内製と外注を併用するハイブリッド型という選択肢
マーケティング内製と外注、そもそも何が違うのか
マーケティング内製とは、自社の社員がマーケティング業務を担う体制を指し、外注とは、制作会社や広告代理店、コンサルティング会社など社外のパートナーに業務を委託する体制を指します。どちらか一方が絶対的に優れているという話ではなく、事業フェーズ・扱う業務の専門性・社内に蓄積したいノウハウの範囲によって、最適な体制は変わります。両者を比較する際は、月々の支払額という表面的なコストだけでなく、意思決定のスピードや情報の機密性まで含めて検討する必要があります。まずは両者の違いを整理したうえで、経営視点での判断基準を確認していきます。
実務で複数のクライアントを支援する中で、内製・外注のどちらか一方に偏った体制を敷いている企業ほど、体制変更のタイミングを逃しやすい傾向を見てきました。事業拡大や担当者の異動・退職といった変化が起きたタイミングで初めて体制の見直しに着手するケースが多く、平時から判断基準を持っておくことで、変化への対応スピードは大きく変わります。マーケティング活動全体をどう組み立てるかという上位の戦略設計については、別記事「中小企業のマーケティング戦略立案フレームワーク、経営者が押さえる7つの視点」でも取り上げていますので、体制論の前提となる戦略設計を確認したい場合はあわせてご参照ください。
内製と外注の判断基準(経営視点で見るべき4つの観点)
内製にするか外注にするかを判断する際は、担当者の得意・不得意だけでなく、経営視点での複数の観点を組み合わせて検討する必要があります。ここでは特に重要な4つの観点を取り上げます。
事業フェーズと業務の専門性
創業期や新規事業の立ち上げ期は、専門性の高い業務を都度習得するよりも、外部の専門知見を短期間で取り込める外注体制の方が向いていることが多くあります。一方、事業が安定期に入り、特定の業務量が継続的に発生するようになった段階では、内製化によって固定費化した方が中長期的なコストを抑えられるケースが増えてきます。例えば、月間の記事制作本数やSNS投稿頻度が一定水準を超えて安定してきた場合は、内製への切り替えを検討する一つの目安になります。
属人化・情報漏洩などのリスク許容度
内製・外注のいずれを選ぶ場合も、特定の担当者や外部パートナー1社に業務が集中しすぎるリスクへの目配りが必要です。内製で1名体制のまま運用すると、担当者の異動・退職によって業務が止まってしまう属人化リスクがあり、外注で1社に全面委託すると、契約終了時にノウハウごと失われるリスクがあります。どちらの体制でも、業務手順やノウハウをドキュメント化し、特定の個人・組織に依存しすぎない仕組みを並行して整えておくことが望ましいといえます。
体制コストの正しい考え方
内製の体制コストを検討する際、担当者の給与だけを見て「外注費より安い」と判断するのは危険です。採用・教育にかかるコスト、ツール利用料、マネジメントにあたる管理職の稼働時間まで含めて按分しなければ、実質的な体制コストは見えてきません。人件費の額面だけで内製と外注を比較すると、内製の方が実際には割高になっているケースを見落としやすくなります。
スピードとノウハウ蓄積のバランス
外注は専門性の高い成果を短期間で得やすい一方、ノウハウが社内に残りにくいという特性があります。内製は逆に、立ち上がりに時間がかかる一方、社内にノウハウが蓄積されやすいという特性があります。どちらを優先するかは、その業務を中長期的に自社の強みとして育てたいかどうかによって変わります。

内製にかかる体制コストの按分方法
内製の体制コストは、担当者の給与だけでなく、複数の要素を積み上げて算出する必要があります。具体的には、給与・社会保険料などの直接人件費に加え、採用コスト、研修・教育コスト、使用するツール・システムの利用料、そして管理職がマネジメントに割く稼働時間の按分分を合算します。
| コスト項目 | 見落としやすいポイント |
|---|---|
| 直接人件費 | 給与・賞与だけでなく社会保険料等の法定福利費も含める |
| 採用・教育コスト | 採用活動の工数や研修期間の生産性低下分も体制コストの一部 |
| ツール・システム利用料 | MAツールや分析ツールなど、内製運用に必要な月額費用 |
| マネジメント工数 | 管理職が担当者の育成・進捗管理に割く稼働時間の按分 |
これまでのご支援で見えてきたのは、採用コストや管理職の稼働時間まで按分して初めて、内製と外注の実質的なコスト差が見えてくるということです。額面の人件費だけを比較して「内製の方が安い」と判断してしまうと、後になってから想定外のコストが積み上がっていたことに気づくケースも少なくありません。加えて、内製化によって担当者が本来注力すべき別の業務に割ける時間が減ってしまう「機会費用」も、体制コストの一部として意識しておくべき観点です。
外注にかかる費用相場と比較のポイント
外注費用の相場は、依頼する業務の範囲や専門性によって大きく異なります。制作物単位で発注するスポット型と、月額固定で運用まで任せるリテイナー型とでは、コストの性質が異なるため、単純な金額の大小だけで比較しないことが重要です。スポット型は単発の制作物に対して割安に見えやすい一方、都度の発注・指示出しにかかる社内工数が積み上がりやすく、リテイナー型は月額の固定費こそ発生するものの、継続的な改善サイクルを回しやすいという特性があります。マーケティング予算全体の配分の考え方は、別記事「中小企業のマーケティング予算はどう決める?費用相場と配分の判断基準」でも解説していますので、外注費を含めた予算設計を検討する際にご参照ください。
外注先を比較する際は、金額だけでなく、対応範囲・レポーティングの頻度・過去の支援実績まで含めて確認することをおすすめします。SEO領域を例にした外注先選定の判断基準は、別記事「中小企業のSEO対策で失敗しない7つの判断基準|費用相場と会社選び」でも詳しく整理しています。クライアント支援の現場では、複数の外注先から見積もりを取得しても、対応範囲の定義がそろっていないために単純比較できないという相談を受けることがあります。見積もり比較の前段階として、自社が「どこまでを外注し、どこからを自社で担うのか」という業務の切り分けを先に固めておくと、外注先ごとの提案内容を同じ土俵で比較しやすくなります。

内製と外注、どちらを選ぶべきかの分岐点
内製と外注のどちらを選ぶべきかは、業務量・専門性・体制コストの3点を軸に判断すると整理しやすくなります。継続的に一定以上の業務量が発生し、かつ社内にノウハウを残したい業務は内製に、専門性が高く社内での育成に時間がかかる業務や、業務量が変動しやすい業務は外注に振り分けるのが基本的な考え方です。特に業務量の変動が大きい広告クリエイティブの制作や、繁閑差の出やすい展示会・イベント関連の業務は、繁忙期だけ外部の力を借りる変則的な体制も選択肢に入ります。
体制コストを正しく按分したうえで比較すると、当初のイメージとは逆の結論になることも珍しくありません。判断に迷う場合は、一部の業務だけを試験的に外注してみて、体制コストと成果を比較しながら段階的に体制を固めていく進め方も現実的です。また、一度決めた体制を固定的に運用し続けるのではなく、半年〜1年に一度は業務量や事業フェーズの変化を踏まえて判断を見直す機会を設けておくと、体制と実態のずれに早く気づけます。
内製と外注を併用するハイブリッド型という選択肢
実際には、内製と外注のどちらか一方に全面的に寄せるのではなく、業務ごとに使い分けるハイブリッド型の体制を取る企業が多く見られます。例えば、戦略設計や進行管理は内製で担い、専門性の高い制作業務やデータ分析だけを外注するといった組み合わせです。
当社の支援経験では、ハイブリッド型を採用する企業ほど、体制変更にかかる意思決定のスピードが速い傾向があります。全面的な内製化・外注化という大きな決断をせずに、業務単位で柔軟に体制を見直せることが理由の一つです。ハイブリッド型を組む際は、「社外に出しても自社の競争力に影響しない定型業務」と「自社の強み・独自性に直結し、社内にノウハウを残したい業務」を先に切り分けておくと、どの業務を内製に残すべきかの判断がぶれにくくなります。自社に合った体制設計に迷う場合は、戦略設計から実行支援まで一気通貫でご相談いただくことも可能です。詳しくは「Webマーケティング」のサービスページをご覧ください。
まとめ
マーケティング業務を内製にするか外注にするかは、担当者の得意・不得意ではなく、事業フェーズ・業務の専門性・体制コストという経営視点での判断基準によって決めることが重要です。内製の体制コストは、給与だけでなく採用・教育コストやマネジメント工数、さらには機会費用まで含めて按分して初めて実態が見えてきます。まずは自社の業務を洗い出し、内製に残したい業務と外注に振り分けたい業務を整理するところから始め、必要に応じてハイブリッド型の体制も検討しながら、事業フェーズに合わせて柔軟に見直していきましょう。判断に迷う場合は、担当者個人の感覚に頼るのではなく、業務量・専門性・体制コストという3つの物差しに立ち返ることで、経営会議でも説明しやすい意思決定につながります。
マーケティングでお困りでしたらご相談ください
マーケティング戦略立案から実行支援まで、貴社の課題に応じた最適なプランをご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q マーケティング業務は何から内製化を検討すべきですか?
業務量が継続的に発生し、社内にノウハウを残したい業務から検討するのが基本です。逆に専門性が高く発生頻度が変動しやすい業務は、外注を継続する方が体制コストを抑えやすい傾向があります。
Q 内製の体制コストは、給与以外に何を含めて計算すればよいですか?
給与・社会保険料などの直接人件費に加えて、採用・教育コスト、ツール利用料、管理職のマネジメント工数まで含めて按分することをおすすめします。額面の給与だけで比較すると実態を見誤ります。
Q 外注費用の相場はどのように調べればよいですか?
依頼する業務の範囲や専門性によって相場は大きく異なるため、一律の金額を示すことは難しいですが、複数の外注先から見積もりを取得し、対応範囲をそろえたうえで比較することが現実的です。
Q ハイブリッド型の体制は、どのように業務を切り分ければよいですか?
自社の競争力に直結しない定型業務は外注に、自社の強みや独自性に関わり社内にノウハウを残したい業務は内製に振り分けるのが基本的な考え方です。
Q 内製と外注、どちらにすべきか判断に迷う場合はどうすればよいですか?
一部の業務を試験的に外注してみて、体制コストと成果を比較しながら段階的に体制を固めていく進め方が現実的です。判断に迷う場合は、当社へのご相談もご検討ください。