新規顧客の獲得に加えて、既存顧客との関係を育てるリピート率の向上に注目する企業が増えています。一方で、「リピート率の計算方法が人によって違う」「平均と比べて自社が高いのか低いのか分からない」「何から施策を始めればいいのか決められない」という声をいただく機会が増えています。本記事では、リピート率の定義と計算方法、LTVとの関係、購入前後の接点で進める7つの改善策を、EC・サブスク・BtoBの継続取引の違いも含めて解説します。
- リピート率の定義と2つの計算方法
- EC・サブスク・BtoBで見る指標の違い
- リピート率とLTVの関係
- 購入前後の接点で進める7つの改善策
- BtoBの契約更新での考え方と進める順番
リピート率とは?定義と計算方法
リピート率とは、一定期間に購入した顧客のうち、繰り返し購入した顧客の割合を示す指標です。ただし「リピート率」に統一された公的な定義はなく、社内や取引先ごとに計算式が異なる場合があります。数字を比較する前に、どの計算式で出した値なのかを揃えることが、リピート率向上の最初の一歩です。
当社では、リピート率の改善相談を受けた際、施策の話に入る前に「誰を分母にした数字か」を確認するところから始めます。定義が揃っていないまま施策の効果を比べると、改善したのか単に計算式が変わっただけなのか判断できなくなるためです。
期間内リピート率の計算方法
期間内リピート率は、集計期間内に2回以上購入した顧客数を、その期間に購入した顧客数で割って求めます。年間や四半期など、期間全体の購買行動を俯瞰するときに向く指標です。
初回購入者ベースの再購入率の計算方法
再購入率は、初回購入から一定期間内(例として90日)に2回目の購入をした顧客数を、その期間に初めて購入した顧客数で割って求めます。施策の効果を新規顧客の単位で追いたいときに向く指標です。
たとえば、仮の数字として、ある月の初回購入者が100人、そのうち90日以内に2回目を購入した人が20人であれば、再購入率は20%です。この20%が高いか低いかは業種や商材で大きく変わるため、平均値との比較よりも、自社の月別推移を見るほうが判断に役立ちます。リピート率の平均を示す信頼できる一次ソースは確認できていないため、本記事では平均値を示しません。
| 指標 | 計算式 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 期間内リピート率 | 期間内に2回以上購入した顧客数 ÷ 期間内に購入した顧客数 | 期間全体の購買行動を把握したいとき |
| 再購入率(初回購入者ベース) | 初回購入から一定期間内に2回目を購入した顧客数 ÷ その期間の初回購入者数 | 施策の効果を新規顧客単位で追いたいとき |
| 継続率 | 期末に継続している顧客数 ÷ 期首の顧客数 | サブスクや契約更新など継続取引を見るとき |
ビジネスモデル別に見るリピート率・継続率の指標
リピート率は、ビジネスモデルによって中心になる指標が変わります。ECのように都度購入が中心なら再購入率、サブスクや契約更新が中心なら継続率が主役になります。BtoBの継続取引では、契約更新率や取引継続の有無で見るケースが多くあります。
| ビジネスモデル | 主に見る指標 | 見るときの注意点 |
|---|---|---|
| EC・小売(都度購入) | 期間内リピート率、初回購入者ベースの再購入率 | 商材の購入間隔に合わせて集計期間を決める |
| サブスク・定期購入 | 継続率、解約率 | 初回から数回目までの離脱時期を分けて見る |
| BtoBの継続取引・契約更新 | 契約更新率、追加発注の有無、取引継続率 | 担当者の異動や契約単位の違いで数字がぶれやすい |
クライアント支援の現場では、新規獲得だけでなく、問い合わせ後や既存顧客へのフォローまで含めて設計する場面があります。BtoBでは購入頻度が低い商材も多く、EC向けの「30日以内の再購入率」をそのまま当てはめると実態に合いません。自社の購入サイクルに合った集計期間と指標を選ぶことが、数字を意思決定に使うための前提です。
サブスクや定期購入を扱う場合は、継続率の設計が中心になります。継続率を高める設計の考え方は「サブスクリプション時代のマーケ戦略とは|継続率を高める設計のコツ」で解説しています。なお、通販で定期購入を扱う場合は、消費者庁の「インターネット通販の定期購入トラブルには御注意を! 令和4年6月1日から、通販の注文時に内容を確認する際の表示がより明確になります。」で案内されているとおり、2022年6月1日から最終確認画面で取引の基本的な事項を明確に表示する必要があります。継続を促す施策は、こうした表示ルールを守ったうえで設計します。
リピート率とLTVの関係
LTV(顧客生涯価値)とは、1人の顧客が取引期間全体で自社にもたらす利益の総額を指します。簡易的には「平均購入単価 × 購入頻度 × 継続期間」で考えることができ、リピート率は、このうち購入頻度と継続期間の両方に影響します。

平均購入単価を上げるには値上げや商品構成の見直しが必要ですが、リピート率の向上は、既存顧客との関係を深めることで購入頻度と継続期間の両方を伸ばせる点が特徴です。新規顧客を増やす施策に比べ、既存顧客の再購入を増やす施策は、獲得にかかる費用を抑えながらLTVを高められる可能性があります。ただし、値引きに頼ったリピートは利益を削るため、粗利ベースでLTVを見ることをおすすめします。
LTVの具体的な計算方法や粗利ベースでの考え方は「顧客LTV(生涯価値)の計算方法とは|経営に活かす算出と活用のコツ」にまとめています。リピート率とあわせてLTVも追うと、施策の投資判断がしやすくなります。
リピート率向上の前に確認したい3つの指標
リピート率が低い原因は、施策不足とは限りません。集計の定義や顧客の内訳によって、数字の見え方が変わるためです。施策を選ぶ前に、次の3つを確認することをおすすめします。
顧客数の内訳(新規とリピーターの比率)
新規顧客の比率が急に高まった期は、期間内リピート率が見かけ上低下します。分母に新規顧客が多く含まれるためです。この場合は、リピーターの実数と再購入率の推移もあわせて確認します。
初回から2回目までの日数
2回目の購入までの日数が分かると、フォローを行う適切なタイミングを決められます。商材の使い切り時期や契約の更新時期と照らし合わせて確認します。
離脱した顧客の理由
2回目に進まない理由が、商品への不満なのか、忘れられているだけなのかで打つ手は変わります。問い合わせ履歴やアンケートの声から、離脱理由を大きく分類しておきます。
これらの指標を含め、マーケティング全体でどの数字を追うかは「マーケティングKPI・KGI設計の実践ガイド|失敗しない中小企業の4ステップ」の考え方を参考にすると整理しやすくなります。
リピート率向上の7つの改善策
リピート率向上の施策は、購入前、購入時、購入後の接点に分けて考えると整理しやすくなります。購入前と購入時の施策は、期待値のズレや初回体験の質に働きかけます。購入後の施策は、2回目の購入や継続の理由をつくるものです。

1. 購入前の訴求と実態のズレをなくす
リピート率は、購入前に抱いた期待と、実際の利用体験との差に左右されます。商品説明やランディングページで実態以上に魅力を訴求すると、初回の購入は増えても、2回目につながりにくくなります。初回購入を増やす訴求と、リピートされる訴求は、同じ内容とは限りません。
2. 初回の体験(納品・利用開始)を整える
初回の体験は、その後の継続を決める最初の接点です。ECなら梱包や配送の分かりやすさ、SaaSやBtoBサービスなら利用開始時の案内や初期設定の支援が該当します。購入から利用開始までの顧客の動きを整理する手法として、「カスタマージャーニーマップの作り方|実践的なテンプレートと活用事例」が参考になります。
3. 購入直後のフォローで使い方を伝える
購入直後に、お礼とあわせて使い方や活用のコツを伝えると、購入した商品やサービスを使い切る前に不安を解消できます。メールやLINEなど、顧客が普段使うチャネルで、購入から数日後と使い切り時期の前後に連絡を入れる設計が一般的です。
4. 2回目の購入の理由を用意する
顧客は、必要性を感じなければ2回目の購入をしません。関連商品の提案、消耗品の補充のタイミングでの案内、次回利用時の特典など、2回目を選ぶ理由を用意します。値引きだけに頼らず、商品の使い方の提案や、購入間隔に合わせた案内を組み合わせるのが現実的です。
5. 購入履歴に応じてセグメント別に提案する
全顧客に同じ内容を送るより、購入履歴や購入間隔で分けた提案のほうが、内容が顧客に合いやすくなります。分け方の起点になる顧客像の整理は、「BtoBペルソナ設計の実務ガイド|作り方とテンプレート活用のコツ」を参考にできます。小売・ECで購買データを活用する具体例は「小売・EC業界のAI活用術とは|接客・在庫・販促での実践例を解説」で紹介しています。
6. 定期・会員など継続の仕組みを設ける
消耗品や利用頻度の高いサービスでは、定期購入や会員プログラム、契約更新の仕組みが継続率を高める手段になります。一方で、継続の仕組みは顧客の解約しやすさとセットで設計しないと、不信感につながります。前述のとおり、定期購入は表示のルールもあるため、公式情報を確認して設計します。
7. 顧客の声を集めて不満の芽を摘む
購入後のアンケートや問い合わせ、NPS(顧客が知人に推奨したいかを尋ねる指標)を通じて、離脱につながる不満を早期に把握します。声の集め方と分析の手順は「NPS(推奨度指標)の測定方法|経営に活かす分析と改善の手順とは」で解説しています。
BtoBの継続取引・契約更新でリピート率向上を考える
BtoBでは、購入の単位が「1回の購入」ではなく「契約」や「取引関係」になるため、リピート率の考え方を読み替える必要があります。継続取引や契約更新でのリピート率向上は、成約後の接点設計で差が出る領域です。
当社の支援経験では、成約後のフォローが手薄になりやすいのは、営業と運用の担当が分かれている場面です。成約までは営業が窓口になり、成約後は別の担当が対応するため、顧客の状況が共有されず、更新の時期に初めて課題が表面化するケースがあります。
| 接点 | BtoBでの施策例 | 確認する指標 |
|---|---|---|
| 成約直後 | 導入時の期待値のすり合わせと初期支援 | 利用開始までの日数、初期の問い合わせ内容 |
| 運用中 | 定期的な状況共有、活用状況の見える化 | 利用状況、担当者との接触頻度 |
| 更新の前 | 更新前の振り返りと追加提案 | 契約更新率、追加発注の有無 |
BtoBでは、契約更新を迎えてから動くのではなく、運用中の接点で顧客の状況を把握しておくことが現実的です。なお、契約の継続を止める側の指標である解約率の見方は、別の切り口として整理しておくと施策の優先順位をつけやすくなります。
リピート率向上を進める順番とまとめ
リピート率向上は、最初に定義と指標を揃え、次に離脱が起きている接点を特定し、7つの改善策のうち影響の大きいものから着手する順番が現実的です。すべてを同時に始めると、どの施策が効いたのか判断できなくなります。
当社では、自社サイトでBtoBマーケティングやAI活用のコンテンツを100本以上公開・運用する中で、公開後の数字を見ながら改善を繰り返す運用を続けています。リピート率も同じで、一度の施策で完結させず、月次で数字を確認しながら改善を重ねる姿勢が成果を左右します。
リピート率は、計算方法の定義、ビジネスモデルに合った指標選び、LTVとの関係の理解、接点別の7つの改善策という順で整理すると、自社で取り組みやすくなります。既存顧客も含めたWebマーケティング全体の設計に迷う場合は、Webマーケティングのご支援内容もご覧ください。
マーケティングでお困りでしたらご相談ください
マーケティング戦略立案から実行支援まで、貴社の課題に応じた最適なプランをご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q リピート率の計算方法は?
期間内に2回以上購入した顧客数を、その期間に購入した顧客数で割って求める方法が一般的です。施策の効果を追う場合は、初回購入者のうち一定期間内に再購入した人の割合(再購入率)も併用します。どちらの式で出した値か、社内で揃えて管理することが大切です。
Q リピート率を上げるにはどんな施策がありますか?
購入前の訴求と実態のズレ解消、初回体験の整備、購入直後のフォロー、2回目の購入理由づくり、セグメント別の提案、定期・会員の仕組み、顧客の声の収集などがあります。離脱が起きている接点を特定し、影響の大きいものから着手するのが現実的です。
Q リピート率の平均はどのくらいですか?
リピート率は業種や商材、購入間隔、計算式によって大きく異なるため、一律の平均値で判断することはおすすめしません。信頼できる一次ソースが確認できない数字を目標にするより、自社の月別や施策前後の推移を基準に見るほうが実務では役立ちます。
Q リピート率とLTVはどう関係していますか?
LTVは平均購入単価、購入頻度、継続期間の掛け算で考えられ、リピート率の向上は購入頻度と継続期間の両方に影響します。詳しい算出方法は、顧客LTV(生涯価値)の計算方法とは|経営に活かす算出と活用のコツで解説しています。
Q BtoBでもリピート率の向上に取り組む価値はありますか?
BtoBでは、契約更新や追加発注、取引継続がリピートに相当するため、取り組む価値があります。ただし指標や集計期間はEC向けと異なるため、自社の契約サイクルに合わせた設計が必要です。設計に迷う場合は、当社へのご相談もご検討ください。