「ペルソナを作ったものの、結局施策にほとんど活かせていない」「作成した資料がそのままファイルに眠っている」——BtoB企業からこうした声をよく聞きます。BtoCのペルソナ設計の考え方をそのままBtoBに当てはめてしまうと、実務で使えるだけの精度に届かないことが少なくありません。本記事では、BtoCとの違いを踏まえたBtoBペルソナの作り方と、含めておきたい項目、作成後の実践的な活用方法までを解説します。
- BtoBペルソナとは何か
- BtoCペルソナとの違い
- ペルソナ作成の基本ステップ
- 決裁者・現場担当者を分けて考える
BtoBペルソナとは何か
BtoBペルソナとは、自社の商品・サービスを検討する典型的な顧客像を、役職・業務内容・抱える課題・意思決定の関わり方まで踏み込んで具体化したものです。個人の趣味嗜好を中心に設計するBtoCペルソナとは異なり、その人が組織の中でどのような役割を担い、何に責任を負っているのかという業務文脈が中心になる点が特徴です。
年齢や家族構成、趣味嗜好といった個人的な属性よりも、所属企業の規模・業種、役職、抱えている業務課題、社内での決裁権限の有無といった要素の方が、BtoBの検討プロセス全体を理解する上で、よほど重要な情報になります。
BtoCペルソナとの違い
BtoCのペルソナは、個人が単独で購買を決定することが多いため、一人の人物像を詳細に描くことで施策に活かせます。一方BtoBでは、実際に情報収集をする現場担当者と、最終的な決裁を行う決裁者が異なるケースが多く、一人のペルソナだけでは検討プロセス全体をカバーしきれないという違いがあります。
また、BtoBの購買行動は個人的な好みよりも、組織としての合理的な判断や、社内の稟議プロセスに強く影響される点も見逃せません。ペルソナを作る際も、個人の感情や好みより、業務上の課題や評価指標(KPI)に着目した設計が求められます。
ペルソナ作成の基本ステップ
BtoBペルソナの作成は、以下のステップで進めると実務に活かしやすくなります。
- 既存顧客の傾向を洗い出す:これまでに受注に至った顧客の業種・規模・役職などの共通点を丁寧に整理する
- 業務課題を具体化する:ペルソナが日常業務の中で直面している課題や悩みを丁寧に言語化する
- 情報収集の行動を整理する:どのような経路で情報を集め、社内の誰に相談しながら検討を進めるかを丁寧に描く
- 意思決定への関わり方を明確にする:現場担当者なのか、決裁者なのか、あるいはその中間の立場なのかを位置づける
これまでのご支援で見えてきたのは、営業担当者やカスタマーサポートが日々接している顧客の生の声を、ペルソナ作成の材料として積極的に活用している企業ほど、実態に近いペルソナに仕上がりやすいという点です。想像だけに頼らず、社内に眠っている顧客情報を集めることから始めることをおすすめします。社内アンケートや過去の商談メモを見返すだけでも、思いがけない発見があるものです。
決裁者・現場担当者を分けて考える
BtoBペルソナを作る際は、可能であれば現場担当者と決裁者それぞれのペルソナを分けて設計することをおすすめします。現場担当者は機能面や日々の使いやすさ、業務負担の軽減を重視する一方で、決裁者は費用対効果やリスク、導入後の投資回収期間を重視する傾向にあります。
当社の支援先でも、現場担当者向けの訴求だけでコンテンツを作成していた企業が、決裁者向けのペルソナも設計したことで、費用対効果を明確に示す資料や導入事例コンテンツを新たに整備し、社内稟議を通過しやすくなったというケースがあります。現場担当者だけを意識していた頃は、機能の細かな比較資料ばかりが増えていましたが、決裁者の視点を加えたことで、投資対効果を端的に示す一枚資料の重要性に気づいたといいます。両者の視点を意識的に分けることが、BtoBならではのペルソナ設計の勘所です。

ペルソナに含めておきたい項目
実務で使えるBtoBペルソナには、少なくとも以下の項目を含めることをおすすめします。所属企業の業種・規模、役職と社内での立場、担当している業務範囲、日常的に抱えている課題、情報収集の方法(検索・SNS・展示会など)、意思決定における関与度(決裁権の有無)、検討時に重視する評価軸(コスト・機能性・実績など)です。
クライアント支援の現場では、これらの項目をすべて一度に埋めようとせず、まずは分かる範囲で仮埋めし、営業やカスタマーサポートへのヒアリングを重ねながら徐々に精度を上げていく進め方をおすすめしています。完璧な情報が揃うまで着手を待つより、動きながら磨き上げる方が現実的です。
作成後の活用方法
作成したペルソナは、コンテンツ制作・広告のターゲティング・営業トークの設計など、あらゆる施策の判断基準として日常的に活用します。新しい施策を検討する際に「このペルソナにとって価値があるか」を確認する習慣をつけることで、施策の一貫性を保ちやすくなります。
カスタマージャーニーマップと組み合わせて活用すると、ペルソナがどのフェーズでどのような行動を取るかまで具体化でき、より実務的な施策設計につながります。詳しくは「カスタマージャーニーマップの作り方|実践的なテンプレートと活用事例」もあわせてご覧ください。
営業チームとの連携という観点では、ペルソナを商談トークスクリプトの土台として使う方法も有効です。決裁者ペルソナが重視する評価軸を踏まえたトークを事前に準備しておくことで、商談の初期段階から的確な訴求ができるようになります。マーケティングだけでなく営業現場でもペルソナが参照される状態を作ることが、投資対効果を高める鍵になります。
ペルソナ設計で陥りやすい失敗
よくある失敗は、精緻な人物像を作り込むことに時間をかけすぎて、実際の施策検討にはほとんど参照されないまま終わってしまうことです。名前や趣味など、施策の判断に直接関係しない情報を詳細に設定することにこだわりすぎると、本来の目的からずれてしまいます。ペルソナ作成はあくまで手段であり、施策の精度を高めるという目的を見失わないことが大切です。
もう一つの失敗は、一度作成したペルソナを固定化してしまい、市場や顧客層の変化に合わせて見直さないことです。事業のフェーズが変わればターゲットとなる顧客層も変化するため、定期的にペルソナの妥当性を検証する運用が欠かせません。新しいサービスを立ち上げたタイミングや、主力商材の顧客層が想定より広がってきたタイミングなどは、ペルソナ全体を見直す絶好の機会になります。
まとめ
BtoBペルソナは、個人の趣味嗜好ではなく、役職・業務課題・意思決定への関わり方を中心に設計することが、BtoCペルソナとの大きな違いです。現場担当者と決裁者を分けて考え、既存顧客の実態にもとづいて作成することで、施策の判断基準として実務に活かせるペルソナに仕上がります。作成後は定期的に見直し、常に実態と乖離しない状態を保つことが重要です。完璧な人物像を目指すより、実際の施策で使いながら精度を高めていく姿勢を持つことをおすすめします。一人で抱え込まず、社内の複数部門を巻き込みながら進めることも成功の近道です。自社のペルソナ設計を専門家と一緒に進めたい場合は、「デジタルマーケティング支援」のサービスページもあわせてご覧ください。
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よくある質問
Q BtoBペルソナは、何人分作ればよいですか?
まずは自社にとって最も重要な顧客層のペルソナを1つ作成し、必要に応じて現場担当者用・決裁者用に分けて広げていくことをおすすめします。最初から多くのペルソナを作りすぎると、運用が煩雑になります。
Q 顧客データが少ない企業でも、BtoBペルソナは作成できますか?
作成できます。既存顧客への簡単なヒアリングや、営業担当者が日々の商談で感じている印象を集めるだけでも、仮説ベースのペルソナ作成には十分な材料になります。
Q ペルソナとターゲット顧客層(セグメント)は同じものですか?
異なります。セグメントは属性で分類したグループを指すのに対し、ペルソナはその中の典型的な一人を具体的な人物像として描いたものです。セグメントを踏まえてペルソナを設計する順序が一般的です。
Q 決裁者のペルソナは、現場担当者と同じ手順で作成できますか?
基本的な作成手順は共通していますが、決裁者は現場業務に直接携わらないことが多いため、費用対効果や投資判断の基準など、決裁者特有の関心事項を重点的にヒアリング・整理する必要があります。
Q 作成したペルソナは、どのくらいの頻度で見直すべきですか?
半年〜1年に一度、あるいは事業の方向性やターゲット層に大きな変化があったタイミングで見直すことをおすすめします。進め方に迷う場合は、当社へのご相談もご検討ください。