動画生成AIの精度が上がり、広告やSNS、採用、商品紹介の補助などに取り入れる企業が増えています。一方で、「作った動画をそのまま商用利用してよいのか分からない」「著作権や人物の扱いをどう確認すればよいか見えない」「実写撮影とどう使い分けるか判断できない」といった点が課題になっています。本記事では、動画生成AIのビジネス活用に必要な商用利用の確認手順、文化庁の考え方をふまえた著作権リスク、活用場面と実写撮影の使い分けを解説します。
- 動画生成AIをビジネスで使える場面と考え方
- 商用利用の前に確認する4つのステップ
- 文化庁の考え方から見る著作権リスク
- 人物・音声・透かしなど動画特有の注意点
- 実写撮影との使い分けと社内ルールの整え方
動画生成AIとは?ビジネス活用で使える場面
動画生成AIとは、テキストの指示(プロンプト)や画像から、短い動画を自動で生成するAIサービスです。映像に加えて音声も同時に生成できるサービスが登場しており、ビジネスでの活用が現実的になっています。ただし、生成した動画をそのまま公開できるかどうかは、サービスごとの規約と生成内容によって変わります。
当社の支援経験では、生成AIの活用相談で「何に使えるか」と同じくらい「どこまで使ってよいか」が論点になる傾向があります。動画は画像より確認項目が増えるため、活用場面を先に絞ることをおすすめします。
| 活用場面 | 向いている使い方 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 広告・SNS投稿 | 短尺のイメージ映像、背景や補助カット、表現案の比較 | 実在の人物・ブランド・音声が混入していないか、配信先のルール |
| 採用 | 職場の雰囲気を補うイメージ映像、説明動画の一部 | 実際の職場や社員と誤解されない表現になっているか |
| 社内研修 | 手順説明やケーススタディの再現映像 | 個人情報や社外秘の情報をプロンプトに入力していないか |
| 商品・サービス紹介の補助 | 利用シーンのイメージ、導入部のカット | 実際の商品の見た目や機能と食い違わないか |
動画生成AIは商用利用できる?確認したい4つのステップ
動画生成AIを商用利用できるかどうかは、「動画生成AI」という分類ではなく、各サービスの利用規約・ライセンス・プランで決まります。一律の答えを探すのではなく、使うサービスごとに同じ手順で確認する仕組みを作ることが現実的です。

| 確認箇所 | 規約・ヘルプで見る内容 | 迷いやすいポイント |
|---|---|---|
| 商用利用の可否 | 商用目的での利用を許可・禁止する条項の有無 | 無料プランと有料プランで条件が異なる場合がある |
| 生成物の権利 | 生成物の権利を誰が持つか、提供側の主張の有無 | 他の利用者にも似た生成物が出力され得るか |
| 透かし・来歴表示 | 透かしやメタデータの付与、削除の可否 | プランや提供経路で表示条件が変わる場合がある |
| 保存期間と提供状況 | 生成動画の保存期間、提供終了や仕様変更の案内 | プレビュー版は仕様が変わりやすい |
ステップ1:利用規約とプランを確認する
最初に、利用するサービスの利用規約と、契約しているプランの条件を確認します。同じサービスでも、無料か有料か、個人向けか法人向け(APIやエンタープライズ)かで、商用利用や入力データの扱いが異なる場合があります。料金や提供条件は変わりやすいため、公式サイトで最新の情報を確認してください。
ステップ2:生成物の権利の扱いを確認する
次に、生成物の権利が規約でどう扱われているかを確認します。たとえばGoogleのGemini API追加利用規約(2026年4月28日更新、確認日2026年9月26日)では、Googleは生成コンテンツの所有権を主張しない一方、同一または類似のコンテンツを他者向けに生成し得ると定めています。生成物を自社だけが独占的に使える映像だと考えず、ブランドを象徴する映像には慎重に使う判断が必要です。
ステップ3:入力する人物・音声・BGM・素材を確認する
画像から動画を生成する場合や、生成後にBGMやナレーションを重ねる場合は、入力する素材の権利も確認します。人物の写真は本人の同意と個人情報の扱い、既存のBGMや音声は別途のライセンスが必要になるケースがあります。
ステップ4:社内承認と記録を残す
最後に、公開前の承認者を決め、利用したサービス名・プラン・規約の確認日・プロンプト・生成日を記録します。当社では、規約の確認日と利用プランを残しておくことをおすすめしています。規約は更新されるため、どの時点の条件で判断したかを残しておくと見直しやすくなります。
動画生成AIの著作権は?文化庁の考え方
動画生成AIで作った動画が著作権侵害になるかどうかは、既存の著作物との「類似性」と「依拠性」で判断されます。文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)は、生成された画像等に既存の著作物との類似性(創作的表現が共通していること)と依拠性(既存の著作物をもとに創作したこと)が認められ、権利制限規定の対象外である場合は、著作権侵害になるとしています。
依拠性については、学習段階で既存の著作物が学習されていた場合、利用者がその著作物を認識していなくても、通常は依拠性があったと推認されるとされています。ただし、学習された創作的表現が出力される状態になっていない場合は、反証の余地もあります。
当社では自社サイトで100本以上のコンテンツを公開・運用しており、公的機関の一次情報を確認してから書くことを重視しています。動画についても、画像を対象にした考え方を当てはめて確認するのが現実的です。画像との共通点は「画像生成AIのビジネス活用術とは|著作権リスクと安全な使い方を解説」で整理しています。
| 論点 | 考え方の要点 | 実務での確認 |
|---|---|---|
| 侵害の成立 | 類似性と依拠性の両方が認められる場合に侵害となり、どちらかが欠ければ侵害にならない | 既存の映画・アニメ・広告に似た場面や構図になっていないか目視で確認する |
| 依拠性 | 学習された著作物は、利用者が知らなくても通常は依拠性が推認される | 特定の作品や作家、キャラクターを指定するプロンプトは避ける |
| 生成物の著作物性 | 人の創作意図と創作的寄与があるかを個別に判断する。侵害の問題とは別 | 自社が独占的な権利を持つ前提で二次利用を設計しない |
なお、この考え方は著作権法との関係を整理したもので、肖像や個人情報などの著作権法以外の論点は別に確認する必要があります。生成物に著作物性が認められるかは個別判断のため、自社の生成動画を他社に模倣された場合に権利を主張できるとは限らない点を前提にしておくことをおすすめします。
動画生成AI特有のリスクは?人物・音声・透かし・提供状況
人物・肖像の扱い
生成された映像の人物が、実在の人物に似てしまうケースがあります。また、顔写真を入力して動画にする場合は、本人の同意と個人情報の扱いが論点になります。個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)でも、生成AIサービスへの個人情報の入力には注意が呼びかけられています。GoogleのVeoでも、人物生成の設定は地域や機能ごとに異なると公式ドキュメントで案内されています。
音声・BGMの扱い
音声も同時に生成できるサービスでは、生成された声や楽曲が既存のものに似るリスクがあります。判断の考え方は映像と同じです。生成後に既存のBGMを重ねる場合は、AIとは関係なく、その楽曲のライセンスが必要になります。
透かしと来歴表示
サービスによっては、生成動画に透かしや来歴情報が付与されます。たとえばGoogleの公式ドキュメントでは、Veoで作成した動画にはSynthID(AI生成コンテンツを識別するための透かし技術)による透かしが入ると記載されています。Google DeepMindのSynthIDの説明では、透かしは目に見えず、トリミングやフレームレートの変更、圧縮にも耐える設計とされています。透かしや来歴情報を消す前提で運用せず、AI生成であることをどう開示するかを社内で決めておくと安心です。
保存期間と提供状況
生成した動画がずっとサービス上に残るとは限りません。GoogleのGemini API向けVeoの公式ドキュメントでは、生成動画はサーバー上に2日間保存された後に削除されると案内されており、ローカルへの保存が必要です。また、モデルがプレビュー版で提供されたり旧モデルが廃止されたりと、仕様の変化も早い領域です。特定のサービスだけに依存した制作フローを作らず、生成物は保存し、規約と提供状況を定期的に見直すことをおすすめします。
動画生成AIの活用場面と実写撮影の使い分け
動画生成AIと実写撮影は、競合するものではなく役割が異なります。実在の商品・人・場所を正確に見せる場面は実写撮影、コンセプトの検証や補助カットにはAIという分担が基本です。

当社では、商品・サービス・採用・ブランディング向けのスチール撮影や動画撮影・編集を「写真・動画撮影」として提供しています。制作会社の立場から見ると、実物の質感や社員の表情、現場の空気感が購買や応募の判断材料になる場面では、実写撮影の価値が大きいと考えています。
一方、企画の初期段階で構成案の雰囲気を共有する試作や、SNSのイメージ映像、社内研修の再現映像には、動画生成AIが向く場面もあります。実写撮影の発注や費用感については「動画制作・撮影の外注ガイドとは|費用相場と会社選びの4つの視点を解説」、BtoBでの動画の位置づけは「BtoBの動画マーケティング活用法|発注時に必ず確認すべき4つの点」で整理しています。
実物や実在の人物が主役になる動画は実写撮影、想像上の場面や補助カットはAIと、判断の軸を先に決めておくと、権利確認の負担も絞れます。
社内で使い始める前に整えたい運用ルール
クライアント支援の現場では、AI活用のルールが未整備のまま、担当者ごとの判断で使い始めるケースが多く見られます。動画は確認項目が多いため、使うサービスを限定し、用途ごとに承認者を決め、生成物と規約確認日を記録する運用を最初に決めておくと、後の見直しがしやすくなります。
情報の取り扱いを含む社内ルールの考え方は「AIセキュリティとガバナンスとは|中小企業が押さえたい5つの対策」で、生成AI全体の活用領域は「生成AIのビジネス活用完全ガイド:中小企業が今すぐ始めるべき5つの領域」で整理しています。業務全体での活用例は「AI業務効率化の実例集|部門別20の事例に見る具体的な活用の方法」も参考になります。
まとめ
動画生成AIのビジネス活用では、サービスごとの規約で商用利用と生成物の権利を確認し、文化庁が示す類似性と依拠性の考え方で著作権リスクを点検し、人物・音声・透かし・提供状況という動画特有の論点を押さえることが土台になります。そのうえで、実在のものを見せる場面は実写撮影、補助や試作はAIと役割を分けると、リスクと制作負担のバランスを取りやすくなります。動画生成AIの活用や実写撮影との使い分けに迷う場合は、当社へのご相談もご検討ください。
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よくある質問
Q 動画生成AIはビジネスで商用利用できますか?
商用利用の可否は、サービスごとの利用規約とプラン(無料か有料か、個人向けか法人向けか)で決まります。一律の答えはないため、利用前に商用利用の条項と生成物の権利の扱いを確認し、確認日を記録しておくと安心です。
Q 動画生成AIで作った動画の著作権は誰のものですか?
文化庁の考え方では、生成物に著作物性があるかは人の創作的寄与などから個別に判断されます。また、既存の著作物との類似性と依拠性が認められれば侵害になり得ます。画像との共通点は「画像生成AIのビジネス活用術とは|著作権リスクと安全な使い方を解説」もご参照ください。
Q 動画生成AIは広告や販促にどう使えますか?
短尺のイメージ映像、SNS用の補助カット、採用や研修の説明映像、商品紹介の導入部などが活用場面です。実物の商品や実在の人物が主役になる場面は実写撮影と使い分けると、権利確認の負担を絞れます。まずは公開範囲の狭い社内用途から試す進め方も現実的です。
Q 動画生成AIで作った動画に透かしは入りますか?
サービスによって異なります。GoogleのVeoで作成した動画には、SynthIDという透かしが入ると公式ドキュメントに記載されています。透かしや来歴表示の扱いは規約で確認し、消す前提の運用は避けると安心です。
Q 動画生成AIと実写撮影はどう使い分ければよいですか?
実在の商品・人・場所を正確に見せる場面は実写撮影、企画初期の試作や補助カットは動画生成AIという分担が基本で、権利確認の負担も絞れます。動画生成AIの活用と実写撮影の使い分けに迷う場合は、当社へのご相談もご検討ください。