制作会社から届いたクリニックのホームページの原稿に、「患者さまの声」や「施術前後の写真」が並んでいた。そのまま載せてよいのかが分からず、公開前に手が止まる場面は珍しくありません。判断の拠り所は、厚生労働省の医療広告等ガイドラインです。載せられない表現と載せるときの条件、制作費用を左右する要素、制作会社への確認項目、公開後の見直しまでを、ガイドラインの記載をもとに、発注前の経営者や担当者の立場で順に見ていきます。

この記事でわかること
  • クリニックのホームページ制作で最初に確認する範囲
  • 載せられない表現と載せるときの条件
  • 制作費用を左右する要素
  • 制作会社に確認する項目
  • 原稿の確認から公開後の見直しまでの流れと進める順番

クリニックのホームページ制作で最初に確認する範囲

最初に確認するのは、ホームページの表現が医療広告の規制の対象になるという点です。デザインや構成を決める前に、載せてよい内容の範囲を押さえておくと、公開前の原稿の差し戻しが減ります。

厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」(2026年10月30日閲覧)に掲載されている「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」(令和8年3月30日最終改正)によれば、医療機関のWebサイトは、原則として規制の対象としない時期を経て、平成29年の医療法の改正により、他の広告媒体と同様に規制の対象になりました。虚偽や誇大等の表示は禁止され、是正命令や罰則等の対象になります。

当社は、Webサイト制作・運用を提供しています。医療広告の規制の確認は、制作会社に任せきりにせず、医療機関側で担うと考えておくのが現実的です。

医療分野でAIを使った文章づくりを検討している場合は、医療機関のAI活用|事務・広報で使える業務と、踏み込まない診療の線引きで、広報の下書きの扱いを整理しています。

クリニックのホームページに載せられない表現と条件

ガイドラインでは、次の5つの広告が禁止されています。比較優良広告、誇大広告、公序良俗に反する内容の広告、患者その他の者の主観や伝聞に基づく治療等の内容や効果に関する体験談の広告、治療等の内容や効果について患者等を誤認させるおそれがある治療前後の写真等の広告です。

載せたい内容 当てはまる禁止の広告 制作時の対応
他院との比較、優良さを強調する表現 比較優良広告、誇大広告 表現を事実の説明に改める
患者さまの声、体験談 体験談の広告 治療の内容や効果に関する体験談は載せない
施術前後の写真 治療前後の写真等の広告 載せる場合は、ガイドラインの要件を確認する
効果を断定する表現 誇大広告にあたるおそれがある 効果は、事実の範囲の説明にとどめる

治療前後の写真のように、条件を満たしたWebサイトでは扱いが変わる内容もあります。ガイドラインは、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するWebサイトについて、広告可能事項の限定を解除できる場合を定めています。要件は4つで、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するWebサイトであること、問い合わせ先の記載などで内容を容易に照会できるようにすること、自由診療に係る治療等の内容や費用等の情報を提供すること、自由診療に係る主なリスクや副作用等の情報を提供することです。このうち、後ろの2つは自由診療について情報を提供する場合に限られます。

要件を満たしているかは、ページごとの内容で判断が変わります。制作会社が作った原稿を、公開前に医療機関の責任者がガイドラインと事例解説書で確認する流れにしておきます。事例解説書は、厚生労働省が同じページで公表しています。医療・金融・法律の情報をAI検索に載せるときの観点は、YMYL領域のAEO/LLMO対策|医療・金融・法律における注意点も参考になります。

制作費用を左右する要素

ページ数だけでなく、原稿と表現の確認にかかる工数と、予約や問い合わせの仕組みの範囲が、制作費用を左右します。見積もりでは、金額の高低より、どの作業が含まれているかを比べます。

費用を左右する要素 内容 見積もりで確認すること
サイトの設計 診療科目、医師紹介、アクセスなどの構成づくり ページ数と構成案の作成が含まれるか
原稿と表現の確認 診療内容の文章づくりと、医療広告の規制の確認 原稿を誰が作り、誰が確認するか
予約・問い合わせの仕組み 予約フォーム、問い合わせの導線 フォームの項目設計と通知先
写真・素材 院内、スタッフ、設備の撮影 撮影を含むか、素材を支給するか
公開後の運用 診療時間や休診日の更新、お知らせの追加 更新を誰が行うか、保守の範囲

金額に差が出やすいのは、原稿と表現の確認の扱いです。制作会社が原稿づくりまで担当する場合は、表現の確認の工数が見積もりに入るかを確かめます。リニューアルの場合は、リニューアルの見積もりが割れる理由|URL・コンテンツ移行・CMS変更の3項目で、見積もりの比べ方を整理しています。

制作会社に確認する項目

医療広告の規制への対応、原稿の責任の分担、公開後の修正対応の3つが、確認の中心です。クリニックのサイトは、診療時間や医師の情報が変わるたびに更新が必要になるため、公開後の体制が運用の負担を決めます。

クリニックのホームページ制作で制作会社に確認する3項目を示した構造図。医療広告の規制への対応、原稿の責任の分担、公開後の修正対応について、確認する問いと見積もりで見る点を並べている。

1つ目の医療広告の規制への対応は、制作会社が原稿の表現を確認する範囲と、医療機関が確認する範囲を、書面で分けておきます。2つ目の原稿の責任の分担は、診療内容の記述を誰が書くか、事実の確認を誰が行うかです。3つ目の公開後の修正対応は、診療時間の変更や休診のお知らせを、どのくらいの期間で反映してもらえるかを決めます。

制作会社の選び方全般は、Web制作会社の選び方とは|見積もりで必ず確認すべき5つの内訳ポイントで整理しています。要件を依頼書にまとめる方法は、Webサイト制作の要件定義|発注前に決めておく7項目とRFPへのまとめ方が参考になります。

原稿の確認から公開後の見直しまでの流れ

表現の確認は、原稿づくり、規制の確認、公開、公開後の見直しの4段階で行います。公開して終わりにせず、診療内容や制度の変更に合わせて、定期的に見直す前提で設計します。

原稿の確認から公開後の見直しまでの4つのステップを示したフロー図。原稿をつくる、医療広告の規制を確認する、公開する、診療内容の変更に合わせて見直すの順に進む。

医療機関のサイトでも、診療時間や診療内容がいつ時点の情報かが分かるようにしておくと、受診を検討する人が情報の新しさを判断しやすくなります。初診の流れや持ち物のような受診前の疑問を、質問の形でまとめておくと、問い合わせの前に疑問が解消されます。

クリニックのホームページを進める順番と注意点

進める順番は、載せる内容の範囲を決める、原稿と表現を確認する、構成とデザインを決める、公開後の更新体制を決める、の4つです。表現の範囲を最初に決めておくと、デザインを作り直す手戻りを避けられます。

デザインに入る前に、診療科目と載せる情報、医療広告の規制で確認する項目を、一覧にしてから設計を始めます。当社では、サイトの制作に入る前に、誰に何を届けて何を得るかを文章にしています。クリニックのサイトでも、誰が、どのような状態で、何を確認するために訪れるかを先に言葉にしておくと、載せる情報の優先順位が定まります。

注意するのは、広告の表現に限らず、診療内容の説明が最新の制度や診療体制と合っているかです。制度の変更や厚生労働省の事例解説書の改訂があるため、定期的に確認する担当を決めておきます。ホームページの要件の整理から相談したい場合は、Webサイト制作・運用のページもご確認ください。

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よくある質問

Q クリニックのホームページも、医療広告の規制の対象になりますか?

A

対象になります。厚生労働省の医療広告等ガイドラインによれば、医療機関のWebサイトは平成29年の医療法の改正により、他の広告媒体と同様に規制の対象となり、虚偽や誇大等の表示は禁止されています。デザインや構成を決める前に、載せてよい内容の範囲を確認します。

Q クリニックのホームページに、患者さまの声を載せてもよいですか?

A

患者その他の者の主観や伝聞に基づく、治療等の内容や効果に関する体験談の広告は、ガイドラインで禁止されている広告のひとつです。制作会社の原稿に患者さまの声が入っていた場合は、載せる前に、医療広告ガイドラインと事例解説書で扱いを確認します。

Q クリニックのホームページに、治療の前後の写真を載せられますか?

A

治療等の内容や効果について患者等を誤認させるおそれがある前後の写真等は、禁止されています。一方、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するWebサイトなどの要件を満たす場合は、広告可能事項の限定が解除される仕組みがあります。ページごとに要件を確認します。

Q クリニックのホームページ制作の費用は、何で変わりますか?

A

サイトの設計、原稿と表現の確認、予約や問い合わせの仕組み、写真や素材、公開後の運用の5つで変わります。金額の高低より、どの作業が含まれているかを比べます。特に原稿と表現の確認を誰が行うかが、見積もりの差になりやすい点です。

Q クリニックのホームページ制作を依頼するとき、制作会社には何を確認すればよいですか?

A

医療広告の規制への対応、原稿の責任の分担、公開後の修正対応の3つを確認します。原稿の表現を誰がどの範囲で確認するかを書面で分け、診療時間の変更の反映にかかる期間も決めます。公開前には、ガイドラインと事例解説書で、表現を一つずつ確かめます。