広報の記事も、採用サイトも、SNSも、広告の運用も、気づけばすべてがマーケティング担当の1人に回ってきている。やることの一覧は増える一方なのに、何から止めるかを決める時間も、止めてよいという社内の合意もないまま、日々の作業に追われている。本記事では、マーケティング担当が1人の会社が、何を残して何を捨てるかを決める基準と、その体制で続けられる運用のリズム、経営者が先に決めておくことを具体的に整理します。

この記事でわかること
  • マーケティング担当が1人の会社で優先順位が詰まる理由
  • 残す施策の基準と止める施策の目安
  • 外に出す施策と仕組みに任せる施策の分け方
  • 1人体制で続けられる運用のリズム
  • 経営者が先に決めておくこと

マーケティング担当が1人の会社で優先順位が詰まる理由

優先順位が詰まるのは、企画、実行、計測のすべてを同じ1人が担い、しかも施策の数だけ作業が増えるためです。マーケティング担当が1人の体制とは、施策の企画から制作、運用、数値の確認までを、専任か兼任かを問わず、ひとりの担当者が受け持っている状態を指します。

この体制では、新しい施策を足すたびに、既存の施策に割ける時間が減ります。足すだけで引かない運用を続けると、どの施策も中途半端になり、成果の原因を後から追えなくなります。1人体制で成果を出すには、やることを足す判断より、止める判断を先に決めるほうが現実的です。

起きていること 原因 起きる影響
すべての施策が同じ優先度で並ぶ 止める基準がない どれも更新や改善の頻度が下がる
依頼が来るたびに作業が増える 受ける・断るの権限が担当にない 計画していた施策が後回しになる
数値を見る時間が取れない 実行に時間を使い切る 効果のない施策が続く

組織の体制を一から設計する場合は、マーケティング組織の作り方|中小企業のための体制設計7つのポイントで整理しています。本記事は、すでに1人で回している前提で、優先順位の決め方に絞ります。

マーケティング担当が1人でも残す施策の基準

残す施策は、売上や商談に近いか、自社にしか出せない中身があるか、1人で続けられるか、の3つの基準で選びます。3つのうち、1つでも欠けると、施策が止まるか、成果が出ないまま負担だけが残ります。

基準 確認する問い 当てはまる例
売上・商談に近い 問い合わせや受注に、どのくらい近い施策か 問い合わせ導線の改善、検索広告
自社にしか出せない 他社が同じ内容を出せない中身があるか 自社の事例、現場の知見をもとにした記事
1人で続けられる 外注や仕組みに頼らず、更新を続けられるか 月1回の更新、決まった型のある作業

3つの基準は、施策ごとに点数をつけるのではなく、1つずつ「はい」か「いいえ」で答えます。点数にすると、迷う施策が中間にすべて集まってしまいます。3つすべてに「はい」と答えられる施策から残し、「いいえ」が2つ以上ある施策は、止める候補に回します。

止める施策を決めるときの基準

止める施策は、成果を測れていないもの、他社と差が出ないもの、更新が止まっているもの、の3つの目安から決めます。止めるとは、完全に消すことだけではなく、頻度を下げる、外に出す、休止して再開の条件を決める、という形も含みます。

当社では、新しい記事を企画するとき、公開済みの全記事とタイトル、見出し、メインキーワードを突き合わせて重複を確認し、重複が大きい企画は切り口を変えるか差し替えています。止める判断は、成果の悪い施策を見つける作業ではなく、似た施策や重なる施策を整理する作業でもあります。

1人体制で施策を残すか止めるかを決める判断フロー。売上や商談に近いか、自社にしか出せない中身があるか、1人で続けられるかの3つに答え、いいえが2つ以上なら止める候補に回す。

止める施策は、その日に終わらせず、再開の条件を決めて一時的に止める形が安全です。たとえば、SNSの毎日の投稿をやめるときは、週1回に頻度を下げて3か月後に問い合わせへの寄与を見る、と決めておきます。止める根拠と見直しの時期を書いておくと、社内から「なぜやめたのか」と聞かれたときにも答えられます。

止めるときは、関係者に伝える内容も決めておきます。止める施策、止める理由、再開の条件、空いた時間を何に使うかの4点を、1行ずつ書いて共有する形が基本です。空いた時間の使い道まで書くと、止める判断が「手を抜くこと」ではなく、「より近い施策に時間を移すこと」だと伝わります。

外に出す施策と仕組みに任せる施策の分け方

1人で続けられない施策のうち、価値のあるものは、外注する、ツールに任せる、止める、の3つから決めます。残す基準に当てはまっても、1人で続けられない施策は、そのままでは止まります。

外注に向くのは、作業量が多く、判断の基準を先に渡せる施策です。ツールに向くのは、手順が決まっていて、毎回同じ操作を繰り返す作業です。社内で判断が必要で、手順に落とせない作業は、1人の担当が残して、外へ出さないのが原則になります。外注と内製の分け方は、マーケティング内製化と外注の判断基準|投資対効果から考える分岐点とはで整理しています。

当社は、Webマーケティング支援・広告運用を提供しています。広告運用の一部を外に出す場合は、広告運用の内製化の進め方|代理店から段階的に移す手順と権限整理のコツも参考になります。

判断に迷うときは、その作業を1か月休んだとき、問い合わせや商談に影響が出るかを考えます。影響が出ない作業は、外へ出す優先度も、残す優先度も低い作業です。影響が出る作業のうち、自社の判断が必要なものを担当が残し、残りを外へ出すと、1人の時間が最も効果の出る施策に集まります。

1人体制で続けられる運用のリズム

続けられるリズムは、週次で実行する作業と、月次で数値を見る作業を、分けて固定することです。毎日のように数値を見ると、実行の時間が削られます。

1人体制の運用のリズムを示した図。週次は実行する作業の時間を確保し、月次は数値の確認と続ける止めるの判断を1回に絞り、四半期は施策の入れ替えを見直す。

当社では、Search Consoleのクエリデータを月次で確認し、記事の切り口を決めています。数値を見る場を月次の1回に絞り、そこで続ける施策と止める施策を決める運用は、担当が少ない体制でも続けやすい方法です。四半期に1回、施策そのものの入れ替えを見直す日を決めておくと、止める判断を先延ばしにしません。

目標と指標の決め方は、マーケティングKPI・KGI設計の実践ガイド|失敗しない中小企業の4ステップが参考になります。

経営者が先に決めておくこと

経営者が決めておくのは、優先する目標、担当に任せる判断の範囲、やらないことの合意の3つです。担当者1人では、「止める」と決める権限を持てず、依頼を断れないため、優先順位がいつまでも詰まったままになります。

優先する目標は、問い合わせの数、受注の数など、1つに絞ります。担当に任せる判断の範囲は、止めてよい施策の条件と、断ってよい依頼の種類を書いておきます。やらないことの合意は、経営者と担当が同じ一覧を見て確認し、四半期ごとに更新します。止めるという判断の責任を担当だけに負わせないことが、1人体制を続ける条件です。

優先順位で迷ったときの判断の起点

施策の優劣がつけられないときは、売上や商談に最も近い施策を1つだけ残し、そのほかを一時的に止める判断から始めます。迷う状態では、すべてを少しずつ続けるより、1つに集中したほうが、結果の原因を読み取れます。

1つに絞ったあとは、3か月後に、問い合わせや商談にどう寄与したかを見て、止めた施策のうち再開するものを選びます。再開の条件を事前に書いておけば、一時的に止める判断も、後から説明できます。マーケティング全体の戦略の考え方は、中小企業のマーケティング戦略立案フレームワーク、経営者が押さえる7つの視点を併せてご覧ください。

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よくある質問

Q マーケティング担当が1人の会社は、何から優先すればよいですか?

A

売上や商談に最も近い施策を1つだけ残し、ほかを一時的に止めるのが起点です。すべてを少しずつ続けるより、1つに集中したほうが、結果の原因を読み取れます。3か月後に問い合わせや商談への寄与を見て、止めた施策のうち再開するものを選びます。

Q マーケティング担当が1人の場合、施策を止める基準はありますか?

A

成果を測れていないもの、他社と差が出ないもの、更新が止まっているものを目安にします。残す基準の3つ(売上や商談に近い、自社にしか出せない、1人で続けられる)のうち、「いいえ」が2つ以上ある施策は、止める候補です。完全に消さず、頻度を下げる形でもかまいません。

Q マーケティング担当が1人の会社は、外注とツールをどう使い分けますか?

A

作業量が多く、判断の基準を先に渡せる施策は外注に向きます。手順が決まっていて毎回同じ操作を繰り返す作業はツールに向きます。社内の判断が必要で手順に落とせない作業は、担当が残します。1人で続けられない施策は、外注、ツール、中止のいずれかを選びます。

Q マーケティング担当が1人でも、数値の確認はどのくらいの頻度でよいですか?

A

数値を見る場を月次の1回に絞り、そこで続ける施策と止める施策を決める運用が、担当が少ない体制でも続けやすい方法です。毎日のように数値を見ると実行の時間が削られます。四半期に1回は、施策の入れ替えを見直す日も決めておきます。

Q マーケティング担当が1人の体制で、経営者は何を決めておけばよいですか?

A

優先する目標、担当に任せる判断の範囲、やらないことの合意の3つを決めます。目標は問い合わせ数や受注数など1つに絞り、止めてよい施策と断ってよい依頼の条件を書いておきます。優先する目標は、問い合わせ数や受注数など、1つに絞ります。