広告運用の内製化に取り組み、代理店に任せてきた運用を社内へ移す企業が目立つようになりました。一方で、「何から社内に移せばよいか分からない」「アカウントの権限を代理店とどう整理すればよいか分からない」「引き継ぎの途中で配信が不安定にならないか心配」という担当者も少なくありません。本記事では、広告運用の内製化に必要な体制とスキル、代理店から段階的に移す手順、アカウント権限と契約の整理、内製化後の運用ルール、代理店と併用する場合の考え方を解説します。

この記事でわかること
  • 社内に移す業務の範囲と、必要な体制・スキル
  • 代理店から内製へ移す5つの手順と、各段階で次へ進む条件
  • Google広告の権限の整理と、契約・請求で確認する6つの項目
  • 内製化後の運用ルールと、代理店と併用する場合の考え方
  • 自社だけで進めにくい場合に外部へ委ねる条件と相談先の見方

広告運用を内製化するとは?社内に移す業務の範囲

内製化とは、代理店などの外部に任せていた広告の運用業務を、自社の担当者が担う体制へ切り替えることです。すべてを一度に移す方法に限らず、一部の業務や特定の媒体から移す方法も含みます。

移す対象は、戦略設計、日々の運用、クリエイティブ制作、計測とレポート、アカウント管理の5つに分けると整理できます。社内へ移しやすいかどうかは、業務ごとに違います。

業務 主な作業 社内へ移す際の観点
戦略設計 目標と予算配分の決定、媒体の選定、全体の方針づくり 事業の目標と結びつく判断のため、社内が主体になりやすい
日々の運用 入稿、入札や予算の調整、検索語句やターゲティングの見直し 管理画面の操作に習熟が必要で、並走期間を設けて段階的に移す
クリエイティブ制作 広告文、バナー、動画の企画と制作 社内の制作リソースの有無で、内製と外部委託を分けやすい
計測とレポート コンバージョンの計測設定、数値の集計、報告 計測の設定は自社の資産として、社内で把握しておく
アカウント管理 アクセス権限、請求、計測タグの管理 移管の最初に、自社で権限を確保しておく

内製と外注のどちらを選ぶかの判断基準は、広告代理店の選び方|手数料体系を正しく見極める4つの視点とコツとはとマーケティング内製化と外注の判断基準|投資対効果から考える分岐点とはにまとめました。本記事は、内製化を決めたあとの移行手順に絞ります。内製化は全部を移すか移さないかで決めず、業務ごとに移す順番を決めることをおすすめします。

広告運用の内製化に必要な体制とスキル

必要な役割は、運用担当、承認者、計測担当、クリエイティブ担当の4つです。小規模な体制では1人が複数の役割を兼ねても構いませんが、承認者は運用担当と別の人に置くと、予算の変更に第三者の目が入ります。

役割 担う内容 求められるスキル
運用担当 入稿、入札や予算の調整、検索語句の確認 管理画面の操作、検索意図の読み取り、獲得単価などの指標の理解
承認者 予算の増減や新規出稿の承認、目標との照合 事業の目標と広告予算を結びつける判断力
計測担当 コンバージョンの設定、タグの管理、レポートの作成 GA4など計測ツールの設定と、数値の集計・可視化
クリエイティブ担当 広告文、バナー、動画の企画と制作、テストの設計 訴求の言語化、画像や文章の制作、ABテストの進め方

スキルの中心は、管理画面の操作よりも、数値を見て次の打ち手を決める力です。操作は運用しながら身につきますが、どの数値を見てどう判断するかは、事前に基準を持っておくと迷いません。Google広告の運用の基本はGoogle広告の運用ノウハウ|中小企業が成果を出す8つの実践ステップ、広告文や画像の比べ方は広告クリエイティブのABテストとは|成果を高める実践の進め方とコツが参考になります。

担当者の工数も見込んでおきます。日々の運用に加えて、週次の点検と月次のレポートが加わるためです。運用担当を1人に固定せず、副担当を置いて引き継げる状態にしておくと、異動や退職があっても運用が止まりません。体制の全体像はマーケティング組織の作り方|中小企業のための体制設計7つのポイントを参照してください。

広告運用を代理店から内製へ移行する5つの手順

目標の整理、権限の確保、並走、段階的な移管、独り立ちの5段階で進めます。各段階に次へ進む条件を決めておくと、切り替えの時期を感覚ではなく基準で判断できます。

広告運用を代理店から内製へ移す5つの手順を示すフロー図。目標と現状の整理、権限の確保、並走、段階的な移管、独り立ちと見直しの順に進み、各段階の社内の担当と次へ進む条件を示している

当社は、代表が100社以上のデジタルマーケティング支援に携わってきた経験から、移管は判断が少なく、元に戻しやすい作業から始めるのが進めやすい、というのが当社の見方です。

段階 社内の担当 代理店の担当 次の段階に進む条件
1. 目標と現状の整理 KPI、予算、体制を決め、現在のアカウント構成とレポートを把握する 運用の方針、設定内容、過去の数値を共有する 目標と移す範囲が文書になっている
2. 権限の確保 管理者権限と、請求・計測の資産を自社で確保する 権限の付与と資産の整理に協力する 自社が管理者権限を持ち、権限の一覧がある
3. 並走 定例に同席し、レポート作成と検索語句の確認を担当する 運用を続け、判断の理由を説明する レポートと日々の確認を社内だけで行える
4. 段階的な移管 入稿、入札や予算の調整を順に担当し、変更を記録する 変更内容の確認と助言を行う 社内の運用で数値が目標の範囲内で推移している
5. 独り立ちと見直し 運用ルールに沿って運用し、定期的に体制を見直す 契約を終えるか、相談や点検に範囲を絞る 運用ルールが整い、副担当にも引き継げる

1段階目では、移す前に目標を言葉にしておくことが出発点です。当社は、デザインに着手する前にターゲット・提供価値・ゴールを言語化しています。広告の内製化でも同様に、狙う顧客と目標を先に決めておくと、代理店との引き継ぎで認識のずれを防げます。

移管の順番は、影響の大きさで決めます。最初にレポート作成と検索語句の確認、次に入稿と小さな調整、そのあとに入札や予算の変更、最後に新規キャンペーンの設計を移します。移管は、元に戻しやすく影響の小さい業務から順に進めることをおすすめします。変更の前後で数値を比べられるよう、変更の日付と内容は記録しておきます。

代理店との契約とアカウント権限の整理

最初に確かめるのは、広告アカウントを誰の名義で持ち、誰が管理者権限を持っているかです。自社に管理者権限がない状態では、内製化を進めても、ユーザーの追加や削除を自社で行えません。

Google広告のアクセス権限を整理する

Google広告ヘルプの「Google 広告アカウントのアクセス権の概要」(2026年10月23日閲覧)によれば、アクセスレベルは「メール専用」「お支払いとご請求」「読み取り専用」「標準」「管理者」の5つです。内製化では、このレベルを担当者に合わせて割り当てます。

アクセスレベル 公式ヘルプに記載のあるできること
メール専用 通知メールやレポートを受信できる
お支払いとご請求 お支払い情報の表示・編集、請求レポートの操作ができる。キャンペーンは表示できない
読み取り専用 キャンペーンの表示、プランニング ツールの使用、パフォーマンス レポートの実行ができる。編集はできない
標準 読み取り専用の機能に加え、キャンペーンを編集できる
管理者 すべての機能に加え、ユーザーのアクセス権の付与・変更、サービス間のリンク設定の追加・削除、MCCリンクの管理ができる

管理者権限は、自社の責任者と副担当の複数名に持たせておくと、1人の退職や異動でユーザー管理ができなくなる事態を避けられます。運用担当には標準、承認者や閲覧のみの担当者には読み取り専用を割り当てます。代理店は、移管の段階に合わせて標準から読み取り専用へ、権限を段階的に下げます。

代理店のMCC(複数のアカウントをまとめて管理するアカウント)を使っている場合は、リンクの扱いも確認します。Google広告ヘルプの「クライアント センター(MCC)アカウント: MCC アカウントのユーザー アクセス権について」(2026年10月23日閲覧)に、MCCアカウントをリンクしても管理者権限が自動で付与されるわけではない、という記載が見られます。リンクの有無と、自社に管理者権限があるかどうかは別の確認事項です。アカウントの管理者権限は、移管の最初の段階で自社が確保しておく必要があります。

Meta広告の権限は公式ヘルプの現行画面で確認する

Meta広告では、Metaビジネスヘルプセンターに「ビジネスポートフォリオのユーザーについて」や、パートナーへのアクセス付与を説明するページが用意されており、権限の名称や画面の項目は変更されることがあります。設定の前に、公式ヘルプで現在の名称と手順を照合してください。確認する観点は、広告アカウントやピクセルなどの資産を、どのビジネスが所有しているかと、代理店にどの範囲のアクセスを与えているかの2点です。運用の考え方はFacebook広告(Meta広告)のBtoB活用|ターゲティングと運用のコツ【2026年版】が詳しい記事です。

契約と請求で確認する6つの項目

権限の整理と並行して、契約と請求の取り決めを書面で確かめます。代理店にとっても、引き継ぎの範囲が決まっているほうが協力しやすく、移管が円滑に進みます。

確認項目 確かめる内容
アカウントの名義 広告アカウントとMCCやビジネスのリンクを、どちらの名義で持っているか
管理者権限 自社に管理者権限があるか、権限の一覧を共有してもらえるか
請求と支払い 媒体費の支払い方法と請求書の宛名、代理店への手数料の扱い
計測の設定 コンバージョンの設定、タグ、GA4との連携を誰の管理下に置いているか
引き継ぎ資料 運用履歴、キーワードや除外設定、広告文、クリエイティブ素材を受け取れるか
契約期間と解約の条件 解約の予告期間、並走期間中の費用の扱い

表のうち、計測の設定は見落とされやすい項目です。コンバージョンの設定が途中で変わると、移管前後の数値を比較できません。設計の考え方はコンバージョン計測の設計|GA4イベントとキーイベントの決め方と設定手順が詳しい記事です。

広告運用の内製化後に決めておく運用ルール

決めるのは、変更の記録、定例の点検、承認の流れ、権限の棚卸し、命名規則、レポートの様式の6つです。内製化後は、代理店が担っていた点検の役割も社内に移るため、ルールの形で残しておくと、担当者が変わっても運用の質を保てます。

ルール 決める内容
変更の記録 変更の日付、内容、理由を残す場所と書式
定例の点検 点検する指標と頻度
承認の流れ 承認が必要な変更の範囲と承認者
権限の棚卸し 見直す時期と、削除する条件
命名規則 キャンペーンや広告グループの名前の付け方
レポートの様式 見る指標、期間、共有先

定例の点検では、数値の動きを施策と結びつけて見ます。当社では、Search Consoleのクエリデータを月次で確認し、記事の切り口を決めています。広告運用でも、検索語句を月次で見直し、成果につながる語句の追加と不要な語句の除外を行う運用が基本です。

アカウントの整理も定例に含めます。当社でも、新規記事の企画時に公開済みの全記事とタイトル・見出し・メインKWを突き合わせて、重複を確認しています。広告アカウントでも、同じ語句を複数のキャンペーンで重複して配信していないかを、定期的に点検します。

レポートの自動化はLooker Studioレポート自動化|GA4・GSC連携と月次レポート作成、広告費の評価はマーケティングROIの計算方法|広告費を経営判断に活かす4ステップが参考になります。運用ルールは、担当者が変わっても同じ手順で引き継げる形で文書に残すことが大切です。

代理店と併用する場合の考え方

社内が判断を持ち、代理店が専門性の高い作業を補う形が基本です。内製化は、代理店との契約を終えることだけを指しません。移管の途中や移管後も、一部の業務を代理店に任せ続ける選択肢も取れます。

併用のパターン 社内が担う範囲 代理店が担う範囲 向いている状況
運用は社内、制作は代理店 入稿、入札や予算の調整、レポート 広告文、バナー、動画の制作 運用の担当者はいるが、制作のリソースがない
日々の運用は社内、相談は代理店 日々の運用と点検 媒体の新機能、大きな施策の設計への助言 運用は回せるが、新しい施策の経験が少ない
媒体で分担する 検索広告など、運用の経験がある媒体 動画広告など、専門性が必要な媒体 媒体ごとに社内の習熟度が異なる

広告運用の役割分担が移行の段階で変わる様子を示す上下2段の図。上段は社内の担当が並走期間、移管期間、独り立ちの後で増え、下段は代理店の担当が実行から助言へ変わる流れを示し、下部に権限と記録の扱いの注記を置いている

併用を続けるか終えるかは、条件で判断します。社内だけで運用ルールを回せて、副担当にも引き継げる状態なら、契約を終える選択が現実的です。新しい媒体の立ち上げなど、社内に経験のない領域がある間は、その部分だけを任せ続ける形も有効です。

当社は、Webマーケティング支援としてリスティング広告やSNS広告の運用を提供しています。運用を依頼する場合も、目標、権限、レポートの共有範囲を最初に決めておくと、社内の担当者が数値を把握できる状態を保てます。

広告運用の内製化を自社だけで進めにくい場合の相談先

担当者を確保できない場合や、複数の媒体を同時に移す場合は、外部の支援を前提に進めるのが現実的です。判断を外部に委ねる条件は、次の3つです。

委ねる条件 具体的な状況 相談先の考え方
担当者の工数を確保できない 運用担当を置けず、兼務でも週次の点検が回らない 運用の一部を委託したまま、点検とレポートの理解から社内に移す
権限や契約の調整が複雑 複数の媒体やアカウントがあり、名義や請求が代理店側にある 現在の代理店と引き継ぎの範囲を整理し、必要なら第三者の視点を加える
社内に運用の経験がない 管理画面の操作や指標の読み取りを教える人がいない 移行を伴走する支援先に、研修と並走を含めて相談する

相談の前に、アカウントの構成、直近のレポート、目標、社内の体制の4点を用意しておくと、話が早く進みます。相談先を選ぶときは、移行の伴走に対応しているか、権限を自社名義で整理する前提か、設定や素材の引き継ぎ範囲を書面で示せるかの3点を確かめます。

まず現在の代理店に、内製化を検討している旨と引き継ぎの希望範囲を伝える方法も取れます。広告運用の支援は、Webマーケティングの対象です。

この記事をSNSでシェア
DOCUMENT 資料ダウンロード

マーケティング支援サービスの資料ダウンロード

アズ・マーケティングのサービス内容・支援実績・料金体系をまとめた資料を無料でダウンロードいただけます。マーケティング戦略の検討にお役立てください。

資料ダウンロード(無料)

よくある質問

Q 広告運用を内製化する手順は?

A

目標と現状の整理、権限の確保、並走、段階的な移管、独り立ちと見直しの5段階で進めます。各段階に次へ進む条件を決め、レポート作成や検索語句の確認など、影響の小さい業務から社内に移すのが基本です。期間は、社内の経験と運用の規模に合わせて決めます。

Q 広告運用を代理店から内製に移すときの注意点は?

A

最初に自社が管理者権限を持っているかを確かめ、請求や計測の設定も含めて名義を整理します。移管の途中で計測が変わると前後の比較ができなくなるため、変更の日付と内容は記録しておきます。引き継ぎ資料の範囲も事前に合意しておくと円滑です。

Q 広告アカウントの権限は代理店とどう整理しますか?

A

Google広告のアクセスレベルは、メール専用、お支払いとご請求、読み取り専用、標準、管理者の5つです。自社の責任者と副担当に管理者を持たせ、代理店は移管の段階に合わせて標準から読み取り専用へ下げていく整理が一般的です。

Q 広告運用の内製化に必要な体制はどう考えればよいですか?

A

運用担当、承認者、計測担当、クリエイティブ担当の4つの役割を置きます。小規模な体制では兼務でも構いませんが、承認者は運用担当と分けると予算の変更を点検できます。副担当も置き、引き継げる状態にしておきます。詳しくはマーケティング組織の作り方|中小企業のための体制設計7つのポイントをご覧ください。

Q 広告運用の内製化を代理店と併用で進めてもよいですか?

A

併用は有効な選択です。運用は社内、制作や新しい施策の助言は代理店といった分担や、媒体ごとの分担があります。社内だけで運用ルールを回せる状態になったら契約を終えるかを判断します。内製化の進め方については、当社へのご相談もご検討ください。