Webサイトの新規制作やリニューアルを、制作会社に任せきりにせず、自社で条件を整理してから発注したいと考える企業が増えてきました。「何から決めればよいのか分からない」「依頼内容が曖昧で見積もりを比較できない」「要件定義書やRFPの書き方が分からない」という声もよく聞きます。本記事では、Webサイト制作の要件定義とは何か、発注前に決めておく7項目、目的と成果指標の決め方、RFP(提案依頼書)へのまとめ方を解説します。

この記事でわかること
  • 要件定義とは何か、発注前に決める理由
  • 発注前に決めておく7項目の全体像
  • 目的と成果指標の決め方
  • ページ・機能・予算・スケジュール・体制の整理
  • RFPへのまとめ方と、制作会社に渡す前の確認

Webサイト制作の要件定義とは?発注前に決める理由

何をいつまでにどの水準で作るかを、発注前に言語化して文書にする工程です。ホームページ制作の要件を整理しておくと、提案や見積もりの前提がそろいます。

制作会社の工程にも「要件定義」はありますが、発注者側で決めるのは「目的・範囲・条件」で、画面の細かな仕様や実装方法は、提案を受けたあとに制作会社と詰めていきます。

発注前に決めておくと、依頼内容がそろい、複数社の提案を同じ条件で比べられます。見積もりの比較は、要件をそろえてから始めるのが順当です。見積もりの内訳の読み方と会社選びはWeb制作会社の選び方とは|見積もりで必ず確認すべき5つの内訳ポイントで整理済みのため、本記事は見積もりを依頼する前の準備に絞ります。

要件定義から発注までは5つのステップで、前半の3つを自社で、後半の2つを制作会社とともに進める流れです。そもそもリニューアルを行うかどうかの判断は、Webサイトリニューアルの判断基準|中小企業が知るべきタイミングと費用相場をご覧ください。

要件定義から発注までの5ステップを示すフロー図。自社で行う目的の整理、要件の洗い出し、RFPの作成の3つと、制作会社とともに進める提案の比較、発注の2つに分け、各ステップの内容と成果物を整理している

Webサイト制作の要件定義で決める7項目

目的と成果指標、ターゲット、必要なページ、必要な機能、運用体制、予算とスケジュール、制約条件の7つです。順序は、目的と対象、範囲、進め方です。

項目 決める内容
目的と成果指標 サイトで実現したいことと、実現を測る指標
ターゲット 誰に見てもらい、どの行動をとってほしいか
必要なページ 公開時に必要なページの一覧(サイトマップ案)
必要な機能 フォーム、CMS、検索、外部ツール連携など
運用体制 制作中の窓口と承認者、公開後の更新担当
予算とスケジュール 予算の上限と優先順位、公開希望日と動かせない日程
制約条件 既存URLの引き継ぎ、既存システム、ドメインやサーバーなど

要件定義で決める7項目の全体図。なぜ・誰にの目的と成果指標とターゲット、何をのページと機能、どう進めるの運用体制と予算とスケジュールと制約条件の3グループに分け、決める内容を整理した多層カード図

当社では、デザインに着手する前に、ターゲット・提供価値・ゴール(問い合わせ、採用応募、資料請求のどれを狙うか)を言語化します。要件定義でも同じ考え方で、表の上から順に決めるのが基本です。

目的と成果指標の決め方

要件定義の最初に決める項目です。「サイトで何を実現するか」が目的、「実現できたかをどう測るか」が成果指標で、ここが定まると、ページや機能の要否を、好みではなく目的に照らして判断できます。

目的は1つに絞り、優先順位をつける

サイトの目的は複数挙がりやすいため、主目的を1つ決め、ほかは優先順位をつけて並べます。同じ重みで置くと、トップページの訴求が分散します。

成果指標は公開後に計測できる形で書く

成果指標は、公開後に実際に数えられる形にします。目的ごとの例を次の表に整理します。

サイトの目的 成果指標の例 計測の対象
問い合わせの獲得 問い合わせ完了数、問い合わせ完了率 問い合わせフォームの送信完了
資料請求の獲得 資料ダウンロード完了数 ダウンロードフォームの送信完了
採用応募の獲得 応募完了数、応募ページへの到達数 エントリーフォームの送信完了

当社は自社サイトで、Search Consoleのクエリデータを月次で見て、記事の切り口を決める運用です。このように、定期的に見る数字を先に決めておくと、公開後の運用の土台です。目標の数値は、現状の数値を確認してから置きます。

何を見ればよいかはWebサイト改善の効果測定とは|GA4・GSCで確認する5つの指標、導線の考え方はCV率を高めるBtoBサイトの作り方|構成設計の実践ポイントとはが参考になります。成果指標は、公開日から計測できる設定まで含めて要件に書いておくのが確実です。

必要なページと機能の洗い出し

サイトの目的から逆算して洗い出します。ページはサイトマップ(ページの一覧表)にまとめ、そのうえで「必須」「あれば良い」「今回は見送る」の3つに区分します。

洗い出しでは、ページと機能の要望が社内から多く出てきます。要望をすべて必須に入れず、区分の基準を最初に社内で共有しておくことが大切です。

区分 判断の基準 例
必須 目的の達成に直結し、ないと公開できない サービス紹介、会社概要、問い合わせフォーム、プライバシーポリシー
あれば良い 初回の公開には不要で、運用の中で追加できる お知らせ、事例紹介、よくある質問、コンテンツ記事
今回は見送る 利用の見込みが低い、または別の手段で代替できる 会員機能、多言語対応(目的によっては必須)

ページの洗い出し

ページは訪問者が知りたい順に一覧化します。サービスサイトの場合のページ構成はサービスサイトの構成とは|問い合わせにつながるページ設計と必要なページ一覧、採用サイトの場合は採用サイトの作り方|応募につながる構成と掲載する情報・制作の進め方を解説で整理済みです。要件の段階では、ページの名前と目的が書ければ十分です。

機能の洗い出し

機能は、フォーム、CMS(管理画面からページを更新できる仕組み)、検索、外部ツールとの連携などを挙げます。当社の自社サイトでは、公開日と最終更新日を画面に表示する仕組みをテーマ側に実装済みで、こうした仕組みは要件に入れておくと設計に組み込めます。

CMSは更新担当者のスキルと更新頻度から選び、比較の視点はWordPressとヘッドレスCMSの違い|自社に合うCMSの選定基準が参考になります。MAやCRMなど連携したい外部ツールは、名称を要件に書いておきます。

予算・スケジュール・体制の整理

どれも制作会社が提案の規模と進め方を決める前提です。金額そのものより、上限、優先順位、動かせない日程、社内の動き方を伝えます。

予算とスケジュールの伝え方

予算は、上限と、何に優先して配分したいかをセットで伝えます。上限と優先順位が分かれば、制作会社は範囲に見合った提案を組み立てられます。

スケジュールは、公開希望日から逆算します。ワイヤーフレーム確認、デザインレビュー、原稿確認、テストアップレビューといった工程ごとに、自社の確認にかかる日数を見込んでおくのが現実的です。展示会や採用活動の開始など動かせない日程があれば、要件に明記します。

運用体制の決め方

体制は、制作中と公開後に分けて決めます。制作中は意思決定者、窓口、原稿や写真を用意する担当、内容を確認する担当(法務、人事、営業など)が必要です。公開後は、ページを更新する担当が必要です。

当社は自社サイトでコンテンツ記事を120本以上公開・運用しており、公開後も更新と見直しが続きます。更新担当を要件定義の段階で決めておくと、運用開始後の迷いが少なくなり、選ぶCMSや管理画面の作りにも反映できます。

制約条件の洗い出し

制約条件とは、制作の自由度を狭める前提のことで、既存URLの引き継ぎ、既存システムとの連携、ドメインとサーバーの管理者、社内のセキュリティ規程などが該当します。制約条件は、提案を受ける前に発注者側から開示しておくことをおすすめします。

RFP(提案依頼書)の作り方と要件定義書へのまとめ方

RFPとは、Request for Proposalの略で、発注者が制作会社に提案を依頼するために、要件や条件をまとめた文書です。決めた7項目を書き込めば、RFPは要件定義書を兼ねる形で作れます。

要件定義書は要件を整理した文書、RFPは提案を求める文書です。Webサイト制作では、要件定義書に提案の条件を加えたものをRFPとして渡す形が一般的です。

RFPの章立て

RFPは、次の6つの章で構成すると、7項目をもれなく書き込めます。

章 書く内容 対応する項目
背景と目的 現状の課題、実現したいこと、成果指標、想定する訪問者 目的と成果指標、ターゲット
対象範囲 必要なページと機能の一覧、必須とあれば良いの区分 必要なページ、必要な機能
運用体制 制作中の窓口と承認者、公開後の更新担当 運用体制
予算とスケジュール 予算の上限と優先順位、公開希望日、動かせない日程 予算とスケジュール
制約条件 既存URL、既存システム、ドメインとサーバーの情報 制約条件
提案の依頼事項 提案書の記載内容、提出期限、質問の窓口、選定の方法 (7項目の外)

RFPは、完成度が高くなくても構いません。決まっていない項目は「未定」と明記し、制作会社に提案を求める論点として渡すほうが、空欄のまま渡すよりも提案の質が上がります。

制作会社へ渡す前のチェック

当社では、新規記事の企画時に、公開済みの全記事とタイトル・見出し・メインKWを突き合わせて、重複がないかを確認する運用です。RFPも同じように、渡す前に記載内容を一覧で突き合わせると、抜けに気づけます。見る点は、目的と成果指標を1文で言えるか、必須とあれば良いが分かれているか、予算の上限と動かせない日程が書かれているか、意思決定者と承認の流れが決まっているか、既存URLやドメイン、システムの情報を添付したか、提案を比較する評価の軸を決めたか、の6つです。

要件の整理から制作、公開後の運用までは、Webサイト制作・運用でもご支援しています。

要件定義の初日に書き出す3項目

最初に着手する作業は1つです。目的と成果指標を、A4用紙1枚か1つのテキストファイルに書き出します。1〜2時間あれば書き出せる分量で、成果物は3行です。1行目は目的で、このサイトで実現したいことを1文で1つだけ挙げます。2行目は成果指標で、公開後に数えられる数字(問い合わせ完了数など)を1つ選びます。3行目は現状の数値で、今のサイトでその数字がいくつかをGA4やSearch Consoleで確認して記し、計測していなければ「未計測」とします。

書いた1文は、サイトの目的を最終的に判断する人(経営層や事業責任者)に見せて合意を取ります。この1枚があれば、残りの項目を埋める順番が定まり、ページや機能の要望が出たときも「目的に照らして必須か」で区別がつきます。そのままRFPの「背景と目的」の章の下書きにもなるため、制作会社への相談もこの1枚から始めましょう。

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よくある質問

Q Webサイト制作の要件定義とは何ですか?

A

何をいつまでにどの水準で作るかを、発注前に言語化して文書にする工程です。発注者側では目的、範囲、条件を決め、画面の細かな仕様や実装方法は提案を受けたあとに制作会社と詰めます。依頼内容がそろうため、提案や見積もりを比較しやすくなります。

Q Webサイト制作の要件定義で決める項目は何ですか?

A

目的と成果指標、ターゲット、必要なページ、必要な機能、運用体制、予算とスケジュール、制約条件の7項目です。上から順に決めると、後の項目の判断がしやすくなります。ページの洗い出しはサービスサイトの構成とは|問い合わせにつながるページ設計と必要なページ一覧も参考になります。

Q 要件定義書とRFPはどのように作りますか?

A

決めた7項目を、背景と目的、対象範囲、運用体制、予算とスケジュール、制約条件、提案の依頼事項の6つの章に整理します。RFPの作り方で大切なのは、決まっていない項目を「未定」と明記して渡すことです。完成度よりも、抜けのなさを優先します。

Q ホームページ制作の要件が決まっていなくても、制作会社に相談できますか?

A

相談は可能ですが、目的と成果指標、予算の上限、公開希望日の3点は先に整理しておくと、提案の精度が上がります。決まっていない項目は未定と伝えれば構いません。見積もりの読み方はWeb制作会社の選び方とは|見積もりで必ず確認すべき5つの内訳ポイント、リニューアルの要否はWebサイトリニューアルの判断基準|中小企業が知るべきタイミングと費用相場で解説しています。

Q Webサイト制作の要件定義やRFPの整理を相談することはできますか?

A

目的と成果指標の整理、必要なページと機能の洗い出し、RFPへのまとめ方、公開後の運用体制まで、一連の流れでご相談いただけます。ホームページ制作の要件が固まっていない段階でも対応しています。要件定義やRFPについては、当社へのご相談もご検討ください。