写真や動画を自社の用途に合わせて撮り下ろす企業が増え、撮影の準備の精度が仕上がりや当日の進行を大きく左右する場面が目立ちます。「撮影前にやることが整理できていない」「撮影の進行表(香盤表)をどう作ればよいのか分からない」「商品撮影の準備リストがほしい」という相談を受けています。本記事では、撮影前にやることを整理した準備リスト、進行表の作り方、写真と動画で異なる準備、当日の進行と納品形式の確認点を解説します。

この記事でわかること
  • 撮影の準備が当日の品質を左右する理由
  • 目的・被写体・場所・機材・人員の準備リスト5項目
  • 撮影の進行表(香盤表)の4つの作成手順
  • 商品撮影の準備と、写真と動画で異なる準備
  • 当日の進行と納品形式・権利の確認点

撮影の準備が当日の品質と手戻りを左右する理由

当日に変えられることが少ないからです。撮影当日は、撮影者、出演者、機材、場所、時間が一度に集まっているため、決め漏れがあると、その場で判断するか、別日に再手配するかの二択です。

撮影準備とは、目的と使い道を決め、被写体・場所・機材・人員・時間を手配して、当日の段取りを共有しておく作業のことです。撮り直しや追加撮影といった手戻りは、準備の段階で防げるものが大半です。

当社の写真・動画撮影では、目的と活用シーンの確認、カット割りや構図の設計を撮影より前に済ませ、当日に迷わない状態をつくります。準備で最初に行うのは機材の選定ではなく、何のために撮り、どこで使うかの言語化です。

商品動画の照明・背景・音声といった撮り方は商品紹介動画の作り方|自社撮影のコツと構成・尺の目安、活用先まで解説が詳しい内容です。本記事は、写真と動画に共通する事前準備と進行表に絞ります。

撮影前にやることを整理する準備リストの5項目

目的・被写体・場所・機材・人員の5項目です。この5つを先に書き出しておくと、見積もりの依頼も、進行表の作成も同じ情報を使い回せます。

撮影前の準備リストを目的・被写体・場所・機材・人員の5項目のカードで示した図。各項目について、決めることと確認の観点を並べ、使う媒体と期間から逆算して項目を埋めることを注記している

項目 決めること 確認の観点
目的 誰に何を伝え、どこで使う素材か。必要な点数や本数 使う媒体(Web、広告、SNS、印刷物)と使用期間を書き出す
被写体 撮る商品、人物、空間、作業風景の一覧 商品は点数と型番・色違い、人物は同意の範囲と衣装や身だしなみ
場所 スタジオ、自社オフィス、店舗、工場、屋外などの撮影場所 撮影許可、電源、搬入経路、周囲の音、他の利用者の有無
機材 カメラ、レンズ、照明、三脚、背景、音声機材 用途に必要な画質、予備の電池とメモリーカード
人員 撮影者、ディレクター、進行役、出演者、立会いの担当者 現場で判断する人を1人決め、連絡先を共有する

5項目のうち、最初に埋めるのは目的です。当社は、デザインに着手する前にターゲット・提供価値・ゴールを言語化しており、撮影でも同じ考え方が当てはまります。目的が決まると、被写体の絞り込みも、場所や機材の選択も自然に決まっていきます。

人員は、社内で担える範囲と外部に任せる範囲を分けて割り当てます。内製と外注の分け方はマーケティング内製化と外注の判断基準|投資対効果から考える分岐点とはが参考になります。外注先の選び方や見積もりの見方は動画制作・撮影の外注ガイドとは|費用相場と会社選びの4つの視点を解説にまとめました。

撮影の進行表(香盤表)の作り方

時刻・撮るもの・場所・担当・必要な道具を、1枚の予定表に並べます。映像や撮影の現場では香盤表(こうばんひょう)とも呼ばれ、当日の全員が同じ紙を見て動くための資料です。

作り方は、次の4つの手順です。

手順 やること ポイント
撮るものを洗い出す 写真は点数、動画はシーンの一覧を作る 必須のカットと、時間があれば撮るカットに分ける
所要時間を見積もる セッティング、撮影、入れ替えの時間を別々に置く 撮影そのものより、準備や入れ替えに時間がかかる場合が多い
場所と光で並べ替える 同じ場所、同じ照明のカットをまとめる 屋外は日の当たり方、店舗は営業時間との兼ね合いを見る
予備時間を入れる 各所に余白を置き、昼食や休憩の時間も書く 最後に撮るものは、削っても影響が小さいカットにする

半日の商品撮影を想定した進行表の記入例を示したタイムライン図。集合と共有、セッティングとテスト撮影、優先カットの撮影、休憩と確認、追加カットと撮り漏れ確認の5つの時間帯に分け、各時間帯のやること、担当、注意点を並べている

図は、半日の商品撮影を想定した記入例です。時刻は目安で、実際にはカット数とセッティングにかかる時間から逆算して組みます。

当社の写真・動画撮影では、事前に撮影点数やカット数を伺ったうえで、当日のスケジュールと必要な体制を設計します。進行表では、優先度の高いカットを前半に置き、削ってもよいカットを後半に置くと、時間が押したときも必要な素材を確保できます。

完成した進行表は、前日までに撮影者、出演者、立会いの担当者へ共有します。

商品撮影の準備と、写真と動画で異なる準備

写真は1枚の完成度、動画は時間の流れと音の設計が、準備の中心を占めます。同じ被写体を撮る場合でも、事前に用意する資料と当日の段取りが変わります。

観点 写真の準備 動画の準備
ゴールの単位 必要なカットの点数 シーンの数と全体の尺
事前に作る資料 撮影リストと参考画像 構成案、絵コンテ、台本
光と背景 被写体ごとに光の向きと背景を決める シーンをまたいで光の向きと色味をそろえる
音 基本的に不要 収録場所の騒音、BGM、ナレーションの有無を決める
出演者 ポーズ、表情、衣装を決める 動き、セリフ、話す内容を事前に共有する

動画では、写真の準備に加えて、構成と音の準備が必要です。BtoBでの動画の使いどころと発注側の確認点はBtoBの動画マーケティング活用法|発注時に必ず確認すべき4つの点で整理しました。

商品撮影の準備で先にそろえるもの

商品撮影の準備は、撮影リストと商品そのものの用意から始めます。撮影リストには、商品名、型番、色違い、撮影するアングルを並べます。商品本体は、傷、指紋、ほこりのないサンプルを必要な点数ぶん手配します。

使用シーンを見せるカットでは、小物や背景の素材、手元を写す出演者も事前に決めます。掲載先のサイズや比率は媒体ごとに異なるため、先に調べておくと撮り直しを防げます。

撮影が難しい場面は、画像生成AIで補う選択肢も検討できます。権利面の注意点は画像生成AIのビジネス活用術とは|著作権リスクと安全な使い方を解説をご覧ください。

撮影当日の進行で整えておきたい点

当日の進行で整えるのは、判断する人、連絡の手段、撮り漏れの確認方法、予備の4点です。進行表がそろっていても、現場で判断する人が決まっていないと、撮影が止まります。

判断する人は、撮影の目的を理解している担当者を1人置きます。連絡の手段は、現場の責任者だけでなく、場所の管理者や出演者にもつながる電話番号やチャットを前日までに共有します。

撮影の開始前に、進行表と優先カットを全員で確認します。人物を撮る場合は、出演者に撮影の目的、使う媒体、使う期間を伝え、同意の範囲を書面で残しておくのが一般的な進め方です。

当社でも、自社サイトで記事を120本以上公開・運用する中で、新規記事の企画時に公開済み記事とタイトル・見出し・メインKWを突き合わせています。撮影でも、終了前に進行表のカット一覧と撮影した素材を突き合わせると、撮り漏れに気づけます。片付けを始める前に行うのが現実的です。

採用向けの写真は、掲載する情報と合わせて準備します。掲載内容の整理は採用サイトの作り方|応募につながる構成と掲載する情報・制作の進め方を解説へ。展示会のブースを撮る場合は、撮影日を展示会の出展準備スケジュール|出展決定から当日までの段取りとチェック項目の全体の流れに組み込みます。

撮影後の納品形式と権利の確認

納品形式は、使う媒体から逆算して撮影前に決めます。撮影後に縦横比やファイル形式が合わないと分かると、撮り直しや加工の手間が発生するためです。

項目 決めること
ファイル形式 写真はJPEGやPNG、動画はMP4など、使う媒体で扱える形式
縦横比とサイズ 16:9、9:16、1:1など、掲載先ごとの比率と大きさ
点数と本数 納品する点数、動画の本数、短縮版の有無
納品方法と期限 データの受け渡し方法と、確認を挟む日程
修正の範囲 修正の回数と、対応できる内容
素材の保管 未使用のカットや元データを、誰がいつまで保管するか
権利と利用範囲 著作権の扱い、使える媒体と期間、出演者の同意の範囲

権利の扱いは、依頼前に決めておく項目です。文化庁「誰でもできる著作権契約マニュアル」(2026年10月23日閲覧)によれば、著作物の制作を依頼しても、完成した著作物の著作権を取得したことにはならず、依頼した側が取得するには契約で合意しておく必要があります。著作権の全部を譲渡する場合は、著作権法第27条と第28条に規定する権利を含むと明記する必要があり、明記しないと二次的著作物に関する権利は譲渡の対象ではないと推定される(同法第61条第2項)とも案内されています。

同じ資料には、譲渡のほかに、利用方法を定めて利用を認める利用許諾契約の説明もあります。撮影を依頼する前に、素材を譲渡で受け取るのか、利用範囲を決めた許諾で使うのかを、使う媒体と期間から決めておくと、納品後の認識のずれを防げます。

当社の写真・動画撮影では、Webサイト・広告・SNSでの使いどころまで見据えて素材を提案します。当社でも自社サイトでは、公開日と最終更新日を画面上に表示しており、素材も撮影日を記録しておくと、更新の要否を判断しやすくなります。

撮影準備を始めるときの最初の一歩

最初の一歩は、撮影の用途を1行で書き、使う媒体・使用期間・必要な点数を並べた「撮影メモ」を1枚作ることです。所要時間は、関係者と相談する時間を除けば30分から1時間ほどです。

書く内容は5つです。誰に何を伝える素材かを示す用途の1行、掲載する媒体と使用期間、撮るものの一覧と優先順位、参考にしたい写真や動画の例を3点、現場で判断する人の名前です。

成果物はA4で1枚のメモです。このメモが、準備リストの5項目を埋める元になり、外部に依頼する場合は見積もりの依頼資料にも使えます。メモができたら、準備リストの目的と被写体を埋め、進行表の手順に進みます。撮影の設計から外部に任せる場合は、写真・動画撮影の支援内容も参考にしてください。

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よくある質問

Q 撮影前にやることは何ですか?

A

目的、被写体、場所、機材、人員の5項目を決めることです。最初に、誰に何を伝え、どこで使う素材かを言語化すると、残りの項目が決まりやすくなります。そのうえで撮影の進行表を作り、撮影の前日までに関係者へ共有します。商品撮影の準備では、撮影リストの作成も加わります。

Q 撮影の進行表(香盤表)はどう作りますか?

A

撮るものを洗い出し、所要時間を見積もり、場所と光で並べ替え、予備時間を入れる4つの手順で作ります。時刻、撮るもの、場所、担当、必要な道具を1枚に並べ、優先度の高いカットを前半に置くのが基本です。完成後は、前日までに撮影者や出演者へ共有します。

Q 商品撮影の準備リストには何を入れますか?

A

商品名、型番、色違い、撮影するアングルを並べた撮影リストと、傷や指紋のないサンプルの手配が中心です。使用シーンを撮る場合は小物や背景、掲載先のサイズや比率も入れます。動画の撮り方は商品紹介動画の作り方|自社撮影のコツと構成・尺の目安、活用先まで解説で扱っています。

Q 写真と動画で撮影の準備はどう違いますか?

A

写真は必要なカットの点数と撮影リストが中心で、動画は構成案や絵コンテ、音の設計が加わります。動画では収録場所の騒音やBGM、ナレーションの有無も事前に決めます。外注時の確認点は動画制作・撮影の外注ガイドとは|費用相場と会社選びの4つの視点を解説が参考になります。

Q 撮影後の納品で確認しておくことは何ですか?

A

ファイル形式、縦横比、点数や本数、納品期限、修正の範囲、素材の保管、著作権と利用範囲を撮影前に決めておきます。権利は契約で合意しておく必要があります。撮影の準備や進行表の設計については、当社へのご相談もご検討ください。